ホブスンの帝国主義論の光と影
ホブソンの帝国主義論における「光」
ホブソンは、1902年に出版した『帝国主義論』の中で、帝国主義を資本主義の拡張として捉え、そのメカニズムを経済的な観点から鋭く分析しました。彼は、当時の資本主義社会における過剰な貯蓄と過少消費の問題に着目し、これが帝国主義の原動力になっていると主張しました。
具体的には、国内市場が飽和状態に達すると、資本家は過剰な資本を海外に投資する必要性に迫られます。そして、その投資先を確保するために、自国の政府に対して圧力をかけ、植民地獲得や市場支配を促すようになるというのです。
ホブソンの分析は、従来の帝国主義論、すなわち、帝国主義を国家間の権力闘争や民族主義の結果として捉える見方に一石を投じるものでした。彼は、帝国主義の背後にある経済的なメカニズムを明らかにすることで、その本質をより深く理解しようと試みたのです。
ホブソンの帝国主義論における「影」
ホブソンの帝国主義論は、画期的な分析として評価される一方で、その限界も指摘されています。特に、彼の西洋中心主義的な視点や、人種差別的な言説は、現代の視点から見ると大きな問題点として挙げられます。
例えば、ホブソンは、西洋文明を「進歩した」文明、非西洋文明を「遅れた」文明とみなし、帝国主義を「遅れた」地域に対する「進歩した」地域の「負い目」として正当化するような言説を展開しています。このような考え方は、西洋列強による植民地支配を正当化するイデオロギーとして利用された歴史があります。
さらに、ホブソンは、アジア人やアフリカ人に対して、劣った人種であるという偏見に基づいた記述を行っています。このような人種差別的な言説は、現代社会では到底受け入れられるものではありません。
ホブソンの帝国主義論は、その鋭い分析力と問題提起にもかかわらず、その限界を認識した上で批判的に読む必要があります。