ホッブズの「リヴァイアサン」の思想的背景
**1. イギリス内戦の影響**
トーマス・ホッブズ(1588-1679)は、イングランド内戦(1642-1651)という激動の時代に「リヴァイアサン」を執筆しました。この内戦は、王党派と議会派の対立が深刻化し、社会が混乱と暴力に陥った時代でした。ホッブズはこのような状況を目の当たりにし、人間の本性と社会秩序について深く考察しました。
**2. ルネサンスの影響**
ホッブズは、ルネサンス期に流行した人文主義の影響も受けています。彼は、古代ギリシャ・ローマの古典に精通し、人間の理性と経験の重要性を認識していました。彼は、聖書や宗教的権威ではなく、理性に基づいた政治哲学を構築しようとしました。
**3. 科学革命の影響**
16世紀から17世紀にかけて起こった科学革命も、ホッブズの思想に大きな影響を与えました。特に、ガリレオ・ガリレイやウィリアム・ハーベイといった科学者の業績から、彼は機械論的な世界観を形成しました。ホッブズは、宇宙や人間を含む自然界のすべてが、運動と法則によって説明できると考えました。
**4. 社会契約論**
ホッブズの思想の中核をなすのが、社会契約論です。これは、国家が個々の人間の合意によって成立するという考え方です。ホッブズは、「自然状態」においては、人間はすべてが自由で平等だが、自己保存のために絶えず争い、社会は「万人の万人に対する闘争」の状態にあると主張しました。この状態から脱却するために、人々は理性に基づいて社会契約を結び、絶対的な権力を持つ主権者に服従することで、平和と安全を確保するとしました。