## ホッファーの大衆運動の世界
ホッファーの生涯と著作
エリック・ホッファー(1902-1983)は、アメリカの社会哲学者であり、港湾労働者として働きながら独学で学問を修めました。彼は1951年に、大衆運動の心理を分析した著書 **「大衆運動の時代」** を発表し、大きな反響を呼びました。この著作は、20世紀の全体主義運動や革命運動を理解する上で重要な古典とされています。
大衆運動の特徴
ホッファーは、ナチスや共産主義といった全体主義運動だけでなく、宗教改革や民族運動、革命運動など、歴史上の様々な大衆運動に共通する特徴を分析しました。彼は、大衆運動が社会のあらゆる階層の人々を引きつける要因として、以下の3つを挙げました。
* **欲求不満と疎外感**: 社会における地位や境遇に不満を持ち、疎外感を抱く人々は、現状を打破し、新しい秩序を求めるようになります。
* **自己否定**: 大衆運動は、参加者に自己否定と自己犠牲を求めます。人々は、運動に没頭することで、自身の無意味さや無力感から解放され、高揚感や一体感を味わうことができます。
* **行動への渇望**: 大衆運動は、参加者に明確な目的と行動指針を与えることで、彼らを現実の生活の不安や退屈から解放します。
大衆運動の指導者
ホッファーは、大衆運動の指導者が、運動の成功に大きな影響力を持つことを指摘しました。彼は、大衆運動の指導者を、以下の3つのタイプに分類しました。
* **狂信的な信者**: ある特定のイデオロギーや教義を盲信的に信じ、それを実現するために手段を選ばない指導者。
* **実務能力に長けた組織者**: 運動の組織運営能力に優れ、大衆を効率的に動員することができる指導者。
* **大衆の欲望を巧みに操る扇動者**: 大衆の感情や欲望を理解し、巧みなレトリックやプロパガンダを用いて彼らを扇動する指導者。
大衆運動の変遷
ホッファーは、大衆運動が、その発展段階に応じて、異なる特徴を持つことを指摘しました。彼は、大衆運動の変遷を、以下の3つの段階に分けました。
* **形成期**: 運動がまだ小規模で、指導者や参加者の熱意と献身によって支えられている段階。
* **発展期**: 運動が拡大し、組織化が進み、より多くの人々を動員するようになる段階。
* **硬直化・衰退期**: 運動が体制化し、官僚化が進み、当初の熱意や柔軟性を失っていく段階。