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ホイジンガの中世の秋

ホイジンガの中世の秋

中世の秋における「選択」

ヨハン・ホイジンガの主著『中世の秋』は、14世紀から15世紀にかけてのフランスとブルゴーニュ宮廷文化を題材に、中世の精神文化を分析した歴史書です。本書においてホイジンガは、当時の文化現象を「選択」という観点から考察しています。しかし、「選択」という言葉は、現代的な意味合いで用いられているわけではありません。ホイジンガは、当時の文化が意識的に、あるいは計画的に形成されたとは考えていません。むしろ、当時の社会状況や精神風土の中で、特定の価値観や行動様式が「選ばれ」、結果として中世末期の文化が形成されたと捉えています。

騎士道と敬虔の理想

ホイジンガは、中世末期の文化を特徴づける要素として、「騎士道」と「敬虔」の理想を挙げます。騎士道は、武勇や名誉、貴婦人への献身といった価値観を重視する道徳規範であり、当時の貴族社会において重要な役割を果たしていました。一方、敬虔は、神への絶対的な服従と来世への希望を説くキリスト教の教えに基づくものであり、人々の精神生活に大きな影響を与えていました。

理想と現実の乖離

しかし、ホイジンガは、これらの理想が現実とは乖離していたことを指摘します。騎士道は、華美な装飾や儀礼、恋愛遊戯に堕し、本来の武勇や忠誠といった価値観を見失っていました。また、敬虔も形式主義や迷信に染まり、真の信仰心とはかけ離れたものになっていました。ホイジンガは、こうした理想と現実の乖離こそが、中世末期の文化を特徴づけるものだと考えています。

「生の秋の憂愁」

ホイジンガは、中世末期の文化を「生の秋の憂愁」と表現しています。これは、当時の文化が、衰退しつつある中世の最後の輝きであったことを意味しています。騎士道や敬虔といった理想は、もはや現実的な力を持たず、人々は過去の栄光にしがみつきながら、来るべき新しい時代への不安を抱えていました。ホイジンガは、『中世の秋』を通じて、こうした中世末期の文化の矛盾と葛藤を描き出そうとしたのです。

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