## ホイジンガの中世の秋の批評
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賞賛
ホイジンガの「中世の秋」は、1919年の出版以来、多くの歴史家や文学者から賞賛を受けてきました。その理由は多岐に渡りますが、主なものを以下に挙げます。
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鮮やかな描写力による没入感**: ホイジンガは、文献史料や美術作品を駆使し、中世後期の文化を生き生きと描き出しました。騎士道、恋愛、死、宗教といったテーマに対する当時の考え方や感じ方を、読者は追体験することができます。この臨場感あふれる筆致が、多くの読者を魅了してきました。
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文化史への新たな視点の提供**: 従来の中世史研究は、政治史や経済史を中心としたものが主流でした。しかしホイジンガは、文化という切り口から中世後期を分析し、当時の精神構造を明らかにしようと試みました。これは、後の文化史研究に大きな影響を与えました。
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学際的なアプローチ**: ホイジンガは、歴史学だけでなく、文学、美術、哲学など幅広い分野の知識を総動員して中世文化に迫りました。この学際的なアプローチは、現代の学問にも通じる先見性を持つものとして評価されています。
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批判
一方で、「中世の秋」は、その内容や方法論に関して、いくつかの批判も受けてきました。主な批判は以下の通りです。
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史料解釈の恣意性**: ホイジンガは、自らの主張に都合の良い史料ばかりを取り上げているという批判があります。特に、中世後期を「衰退」と断定することに対しては、反論も少なくありません。
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歴史の単純化**: 中世は、地域や時代によって多様性に富んだ時代でした。しかしホイジンガは、自らの主張に合うように中世像を単純化してしまっているという指摘があります。
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主観性の強さ**: ホイジンガは、歴史的事実よりも、自身の主観的な解釈や印象を優先しているという批判があります。これは、学術書としての客観性を欠いているという点で問題視されています。
このように、「中世の秋」は賞賛と批判が入り混じる作品です。しかし、その後の歴史学や文化史に与えた影響は大きく、現在でもなお読み継がれる古典として重要な位置を占めています。