## ホイジンガの中世の秋の感性
###
騎士道と敬虔の精神における「優美なるもの」の表現
ホイジンガは、『中世の秋』において、14世紀から15世紀にかけてのフランスとブルゴーニュ宮廷文化を考察し、当時の文化が持つ独特の感性を「中世の秋」と表現しました。彼は、この時代の文化を衰退と退廃の兆候として捉えるのではなく、中世独自の様式が極限まで突き詰められた結果として理解しようとしました。
ホイジンガは、当時の騎士道と敬虔の精神が、「優美なるもの」への強い志向を通して表現されていることを指摘します。華麗な衣装や装飾、儀式や祝祭、恋愛や武勇といった要素は、いずれも現実的な効用を超越した、ある種の「遊び」の精神に基づいていました。
例えば、騎士道の理想は、武勇や名誉といった価値観を、現実の戦闘よりもむしろ、馬上槍試合や恋愛遊戯といった形式的な場において追求されました。そこでは、力強さや勇敢さといった要素が、洗練された様式美と結びつき、「優美なるもの」として表現されました。
敬虔の精神においても、聖人伝や神秘主義文学に見られるように、宗教的な体験が現実を超越した幻想的・詩的なイメージによって語られる傾向が強まりました。華麗な祭壇画や宗教儀式は、人々の心を聖なる世界へと誘うための手段として、視覚的な美しさを追求しました。