## ホイジンガの『中世の秋』と時間
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時間
の表象としての「秋」
ホイジンガは、『中世の秋』において、14世紀から16世紀の西欧文化を「中世の秋」として描いています。これは、単なる年代的な区分ではなく、中世末期の文化が持つ、爛熟と衰退、豊かさと不安、といった両義的な様相を象徴的に表すものです。
ここで重要なのは、「秋」という言葉が持つ時間的なイメージです。秋は、実りをもたらす季節であると同時に、冬に向かう衰退の始まりでもあります。ホイジンガは、中世末期の文化を、この「秋」のイメージと重ね合わせることで、その複雑な様相を浮かび上がらせようとしたのです。
### 2.
時間
感覚の変容
ホイジンガは、中世の人々の時間感覚が、現代人とは大きく異なっていたことを指摘しています。彼らにとって時間は、循環的なものであり、過去と現在、そして未来は、不可分に結びついていました。
例えば、中世の人々は、古代ギリシャ・ローマ文化を、自分たちの時代と地続きのものとして捉えていました。また、キリスト教的な世界観においても、「最後の審判」や「永遠の生」といった概念が、現世の時間感覚に大きな影響を与えていました。
ホイジンガは、中世末期において、この伝統的な時間感覚が揺らぎ始め、より直線的な、現代に通じる時間感覚が芽生え始めたことを指摘しています。これは、経済活動の活発化や都市の発展など、社会構造の変化と関連して起こったと考えられます。
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時間
と祝祭
ホイジンガは、中世の文化において、祝祭が重要な役割を果たしていたことを強調しています。祝祭は、日常的な時間から切り離された、非日常的な時間を創出するものでした。
中世の人々は、祝祭を通じて、時間のリズムを感じ、共同体の絆を強めました。また、祝祭は、過去の歴史や宗教的な出来事を追体験する場でもありました。
ホイジンガは、中世末期において、祝祭の形式化が進み、その活力が失われていったことを指摘しています。これは、時間感覚の変化や社会構造の変化と関連して起こったと考えられます。