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ペリクリーズ:クレオンの人物像

ペリクリーズ:クレオンの人物像

シェイクスピアの作品群の中でも、特に「ペリクリーズ」は一風変わった構成と物語性を持つ作品です。本作におけるクレオンの人物像は、物語全体の流れにおいて重要な役割を果たします。ここでは、クレオンの性格、彼が置かれた状況、そして彼が作品におけるテーマとどのように関わっているのかについて考察します。

クレオンの性格と行動

クレオンは、タルサスの王であり、物語の序盤でペリクリーズと出会います。彼は、自身の王国が飢饉に苦しむ中、ペリクリーズの提供した穀物によって国を救われるという経験を通じて初めて登場します。この出来事は、クレオンが他者の助けを受け入れることができる、ある程度まで謙虚な人物であることを示唆しています。しかし、物語が進むにつれて、クレオンの性格にはより複雑な一面が現れます。

彼の娘、タイサとペリクリーズとの結婚を承諾する過程で、クレオンの誇り高い性格が明らかになります。彼はペリクリーズの勇気と貢献を高く評価し、娘を彼に託すことで、自分の王国との強固な結びつきを望んでいるように見えます。しかしながら、この決断はまた、クレオンの政治的な計算と、自身の権力を保持し拡大する願望をも示しています。

クレオンと作品のテーマ

クレオンの人物像は、「ペリクリーズ」における主要なテーマの一つである権力と道徳性の緊張関係を象徴しています。彼は、自身の権力を維持しようとするがゆえに、時に道徳的なジレンマに直面します。ペリクリーズに対する当初の感謝と友情は、徐々に自己中心的な目標と権力への執着によって曇っていきます。

また、クレオンの物語は、変化と再生のテーマにも深く関わっています。彼の王国が飢饉から救われることは、物語の初期段階での重要な転換点であり、ペリクリーズとの関係もまた、クレオンにとって個人的な変化の契機となります。しかし、彼の性格の複雑さと道徳的なジレンマは、変化が常に前向きであるとは限らないことを示唆しています。

クレオンの人物像を通じて、シェイクスピアは、権力、道徳性、そして個人的な変化というテーマを巧みに絡め合わせています。クレオンは、その多面的な性格と物語における役割を通じて、「ペリクリーズ」における深い人間性と複雑なテーマの探求を促します。彼の物語は、権力の追求が個人に与える影響と、それが如何にして個人の道徳的な選択に影響を及ぼすかを見事に描き出しています。

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