ペリクリーズのクレオンが抱く感情
シェイクスピアの劇中で、ペリクリーズに登場するクレオンは複雑な感情の持ち主である。彼の行動や言葉を通じて、権力への執着、恐怖、そしてプライドの三つの主要な感情が浮かび上がる。クレオンの感情の深層を探ることは、彼のキャラクターの理解を深めるだけでなく、シェイクスピアの人間心理への洞察を垣間見ることにもつながる。
権力への執着
クレオンが示す最も顕著な感情は、権力への執着である。彼はティルスの王であり、その地位を守るためには手段を選ばない。ペリクリーズが彼の娘アンティオキアの手を求める際、クレオンは彼らの結婚を阻止しようとする。この行動は、クレオンが自らの王位と権力を脅かす可能性があると感じた者に対して、いかなる脅威も排除しようとする彼の決意を示している。権力へのこのような執着は、彼の人間性の弱さを露わにしており、また同時に彼の政治的な狡猾さをも強調している。
恐怖
クレオンの行動の背後には、失うことへの恐怖も潜んでいる。彼の権力への執着は、実際にはその権力を失うことへの深い恐怖から来ているのかもしれない。この恐怖は、彼がペリクリーズを含む他者との関わり合いにおいて示す過剰な警戒心や猜疑心にも表れている。クレオンの心の中には、自らの地位や権力が脅かされることへの絶え間ない不安が存在し、それが彼を支配している。
プライド
また、クレオンの行動は強いプライドにも支えられている。彼は自分の地位を誇りとし、他者からの尊敬を強く求めている。このプライドは、彼がペリクリーズとの対決においても妥協を許さない態度を取る一因となっている。クレオンのプライドは、彼の権力への執着や恐怖と密接に結びついており、彼の行動をより一層理解し難くしている。
クレオンの感情は、彼の行動を動かす主要な力であり、彼のキャラクターを形づくる重要な要素である。権力への執着、恐怖、プライドの三つの感情は、彼の行動の背後にある動機を明らかにし、シェイクスピアが描く人間心理の複雑さを示している。クレオンのキャラクターを通じて、シェイクスピアは権力、恐怖、プライドが人間の行動に与える影響を深く探究しているのである。