ペインのコモン・センスを深く理解するための背景知識
18世紀のイギリスとアメリカの関係
18世紀、アメリカ大陸の東部に位置する13の植民地は、イギリス本国の支配下にありました。イギリスは、重商主義と呼ばれる経済政策を採用しており、植民地は本国のための資源供給地および市場としての役割を担っていました。具体的には、植民地はイギリス本国からのみ商品を輸入することが義務付けられ、また、特定の商品は本国にのみ輸出することが許されていました。
この重商主義政策は、植民地の経済発展を抑制するものであり、植民地住民の間には不満が募っていました。特に、イギリス本国議会が植民地に対して課税する権利を持つと主張したことは、植民地住民の強い反発を招きました。有名な「代表なくして課税なし」という言葉は、植民地住民の怒りを端的に表したものです。植民地住民は、自分たちを選出した代表者がいないイギリス本国議会によって課税されるのは不当だと考えていました。
啓蒙思想の影響
18世紀は、ヨーロッパで啓蒙主義と呼ばれる思想運動が隆盛した時代でもありました。啓蒙主義は、理性と経験を重視し、人間の自由と平等を訴えました。ジョン・ロックやモンテスキューなどの啓蒙思想家の著作は、植民地住民の間でも広く読まれ、彼らの政治思想に大きな影響を与えました。
特に、ロックの社会契約説は、植民地住民の独立への動きを正当化する根拠として用いられました。社会契約説とは、国家は人民の同意に基づいて成立し、政府が人民の権利を侵害した場合、人民は政府を倒す権利を持つという考え方です。植民地住民は、イギリス本国政府が自分たちの権利を侵害していると考え、ロックの社会契約説に基づいて独立を正当化しようとしたのです。
アメリカ独立戦争の勃発
イギリス本国政府と植民地との対立は、1775年にレキシントン・コンコードの戦いが起こったことで、ついに武力衝突へと発展しました。これがアメリカ独立戦争の始まりです。当初、植民地側はイギリス本国の圧倒的な軍事力の前に苦戦を強いられましたが、フランスなどの支援を得て次第に戦況を有利に進めていきました。
トマス・ペインの登場とコモン・センスの出版
アメリカ独立戦争のさなかの1776年、トマス・ペインは「コモン・センス」という小冊子を出版しました。ペインはイギリス出身でしたが、アメリカ独立運動に共鳴し、独立を支持する論陣を張りました。「コモン・センス」は、平易な言葉で書かれており、植民地住民に広く読まれました。
ペインは「コモン・センス」の中で、イギリスからの独立を強く訴えました。彼は、イギリス国王の支配は不当であり、植民地はイギリスから独立して共和制国家を樹立すべきだと主張しました。また、彼は独立戦争の勝利によってアメリカは自由と繁栄を実現できると訴え、植民地住民の士気を高めました。
「コモン・センス」は、アメリカ独立運動に大きな影響を与えました。多くの人がペインの主張に共感し、独立への決意を固めました。結果として、「コモン・センス」はアメリカ独立宣言の採択に大きな役割を果たしたと言われています。
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