ペインのコモン・センスと人間
ペインの主張
トーマス・ペインの「コモン・センス」は、1776年1月10日に匿名で出版された、アメリカ独立を主張するパンフレットです。当時のイギリス植民地に住む人々に向けて書かれ、イギリスからの独立と共和制政府の樹立を訴えました。
人間の自然状態と社会
ペインは、人間は本来自由で平等な状態で生まれたと主張しました。これは、ジョン・ロックの社会契約論の影響を受けています。ロックは、自然状態ではすべての人が生命、自由、財産に対する自然権を持っていると考えました。ペインはこの考え方を発展させ、イギリスの君主制はこれらの自然権を侵害していると批判しました。
イギリスの君主制に対する批判
ペインは、イギリスの君主制は不自然で腐敗していると激しく批判しました。彼は、世襲による王権は国民の同意に基づいておらず、国王は国民の利益よりも自身の利益を優先する傾向があると主張しました。また、イギリス議会も腐敗しており、植民地の利益を代表していないと批判しました。
独立の必要性と共和制政府の提唱
ペインは、「コモン・センス」の中で、植民地はイギリスから独立し、共和制政府を樹立すべきだと主張しました。彼は、共和制政府こそが国民の同意に基づいた正当な政府形態であり、国民の権利と自由を保障すると考えました。
「コモン・センス」の影響
「コモン・センス」は、当時のアメリカ社会に大きな影響を与えました。多くの人々がペインの主張に共感し、独立への機運が高まりました。独立宣言の起草にも影響を与えたと考えられており、アメリカ独立の動きを加速させる上で重要な役割を果たしました。
人間観
ペインは「コモン・センス」を通して、人間は理性と良識を持ち、自ら政治に参加し、自身の運命を決定する能力があると主張しました。これは、当時の一般的な考え方であった、人間は生まれながらにして支配されるべき存在であるという考え方に真っ向から反対するものでした。
「コモン・センス」の限界
「コモン・センス」は、アメリカ独立を正当化する上で重要な役割を果たしましたが、その主張には限界もあります。例えば、奴隷制の問題については、明確な反対の立場を示していませんでした。また、女性や先住民の権利についても触れられていません。