## ベーベルの婦人論の周辺
アウグスト・ベーベルについて
アウグスト・ベーベル（Ferdinand August Bebel, 1840-1913）は、ドイツの社会主義者、政治家、著作家です。1869年にヴィルヘルム・リープクネヒトと共にドイツ社会民主党（SPD）の前身となる組織を設立し、その後は党の指導者として活躍しました。マルクス主義者として知られ、資本主義社会の矛盾と労働者階級の解放を訴えました。
「婦人論」の概要
ベーベルの主著「婦人論」（Die Frau und der Sozialismus）は、1879年に初版が出版されました。原題は直訳すると「女性と社会主義」となり、女性問題を社会主義の視点から論じた著作です。本書は、当時のドイツ社会における女性の地位の低さ、経済的な不平等、教育機会の不足などを指摘し、社会主義革命によってのみ女性の真の解放が達成されると主張しました。
出版の背景
19世紀後半のドイツは、産業革命の進展に伴い、女性の社会進出が進みつつありました。しかし、依然として女性は男性よりも低い賃金で労働を強いられ、法の下での平等も保障されていませんでした。このような状況の中で、女性の権利を訴える運動が活発化し、ベーベルもその流れを受けて「婦人論」を執筆しました。
「婦人論」の内容
「婦人論」は、歴史、経済、道徳など多岐にわたる観点から女性問題を分析しています。ベーベルは、原始共産制の時代には男女平等が実現していたと主張し、私有財産の出現とともに女性が抑圧されるようになったと論じました。そして、資本主義社会においても、女性は男性の労働力と比べて安価な労働力として搾取されていると指摘しました。
反響と影響
「婦人論」は、出版当時から大きな反響を呼び、社会主義者だけでなく、フェミニストからも注目されました。本書は、女性の権利向上を訴える運動に理論的な根拠を与え、ドイツ社会民主党の女性政策にも大きな影響を与えました。また、「婦人論」は各国語に翻訳され、世界中の社会主義者やフェミニストに読まれました。