ベーベルの婦人論に影響を与えた本
ジョン・スチュアート・ミル著「女性の解放」
アウグスト・ベーベルは、19世紀後半のドイツにおける社会主義運動の指導者的存在であり、女性の権利擁護を強く訴えました。彼の主張は、当時の社会規範に挑戦し、後のフェミニズム運動にも大きな影響を与えました。ベーベルの婦人論は、社会主義思想を基盤としながらも、多様な思想や社会運動から影響を受けて形成されました。その中でも、特に大きな影響を与えた一冊として挙げられるのが、イギリスの哲学者ジョン・スチュアート・ミルによって1869年に出版された「女性の解放」です。
ミルは、功利主義を基盤とした自由主義思想家として知られており、「女性の解放」においては、当時の西洋社会における女性の従属的な立場を批判し、男女平等の実現を訴えました。ミルは、女性が男性と同等の権利と機会を与えられれば、社会全体にとって大きな利益をもたらすと主張しました。
ベーベルは、「女性の解放」を高く評価し、ミルの主張を自身の婦人論に取り入れました。特に、女性に対する抑圧は、男性優位の社会構造が生み出したものであり、真の社会進歩のためには、女性解放が不可欠であるというミルの主張は、ベーベルの思想の根幹を成すものとなりました。
ベーベルは、ミルの「女性の解放」から影響を受け、女性の社会進出、教育機会の平等、参政権の獲得などを主張しました。また、資本主義社会における女性の労働問題にも着目し、女性労働者の権利擁護を訴えました。ベーベルは、女性を労働力として搾取することの非道徳性を批判し、男女が平等な立場で労働できる社会の実現を目指しました。
「女性の解放」は、ベーベルに、女性の抑圧という問題を、社会構造や経済システムと結びつけて捉える視点を提供しました。ベーベルは、「女性の解放」を単なる男女平等論を超えた、社会主義革命の目標と結びついた重要な課題として位置づけたのです。