ベーコンのノヴム・オルガヌムの感性
ベーコンの「ノヴム・オルガヌム」における感性の位置づけ
フランシス・ベーコンの主著『ノヴム・オルガヌム』(1620年)は、経験論的な科学的方法を提唱した書として知られ、その中で「感性」は重要な役割を担っています。ベーコンは、従来の学問が言葉や論理に偏重してきたことを批判し、自然を理解するためには、まず感覚経験から出発しなければならないと主張しました。
イドラと人間の感覚の限界
ベーコンは、人間の認識を歪めるものとして、「イドラ」と呼ばれる四つの偏見を挙げました。その中に、「洞窟のイドラ」と呼ばれる、個々人の経験や体質、教育などによって生じる偏見が含まれています。これは、人間の感覚が不完全で、客観的な観察を妨げる可能性を示唆しています。
実験と感性の精化
しかし、ベーコンは人間の感覚を完全に否定したわけではありません。彼は、感覚経験を重視する一方で、それが様々な要因によって歪められる可能性も認識していました。そこでベーコンは、「実験」を通して感覚を精錬し、客観的なデータを得る必要性を説いたのです。
感性と理性との協調
ベーコンは、科学的認識において感性と理性の協調を重視しました。彼は、感覚によって得られたデータは、理性による分析や解釈を経て、初めて真の知識へとつながると考えました。つまり、ベーコンにとって感性は、受動的な情報受容機関ではなく、理性と協調して働く能動的な認識能力だったと言えるでしょう。
ノヴム・オルガヌムにおける感性の重要性
ベーコンの『ノヴム・オルガヌム』において、感性は科学的認識の出発点として位置づけられています。しかし、人間の感覚は完全ではなく、偏見や誤りに陥る可能性も孕んでいます。ベーコンは、実験を通じて感覚を精錬し、理性と協調させることで、初めて客観的な知識に到達できると主張しました。