## ベンタムのパノプティコンの力
###
監視の力
パノプティコンの最も明白な力は、その独特な構造が生み出す、恒常的な監視の可能性にあります。中央の見張り塔から、すべての囚人房とその中の個人が見渡せるよう設計されており、囚人たちは常に監視されているかもしれないという意識を抱かざるを得ません。
この監視の力は、必ずしも見張りが常駐している必要がないという点で、さらに強化されます。囚人からは見張り塔の中が見えないため、実際に監視されているか否かは不明瞭です。この不確実性こそが、自己検閲と規律化を促す最大の要因となります。
###
権力の非対称性
パノプティコンは、監視者と被監視者の間に明確な権力の非対称性を生み出します。監視者は、囚人たちの人生を詳細に把握し、彼らの行動をコントロールすることができます。一方、囚人たちは監視者の行動を予測することができず、常に監視の目にさらされているという不安を抱えながら生活を送ることになります。
この権力の非対称性は、パノプティコンの持つ心理的な支配力をさらに強固なものとしています。囚人たちは、抵抗を試みても無駄であり、監視者の目から逃れることはできないという無力感を植え付けられることになります。
###
規律と自己統制の促進
パノプティコンの目的は、罰を与えることではなく、規律化と自己統制を促すことにあります。常に監視されているかもしれないという意識は、囚人たちの行動に影響を与え、規則に従い、問題行動を抑制するように仕向けます。
この自己検閲のメカニズムは、パノプティコンの大きな特徴です。物理的な強制力に頼ることなく、心理的な圧力によって個人の行動を矯正することが可能となるからです。
###
効率性と経済性
パノプティコンは、従来の刑務所に比べて、より少ない人員で多くの囚人を管理できるという点で、効率性と経済性に優れているとされました。少数の監視者で多数の囚人を監視できるため、人件費を大幅に削減することが可能となります。
また、パノプティコンの構造は、囚人同士の接触を最小限に抑えるように設計されており、暴動や脱獄などのリスクを低減することができます。これにより、セキュリティ維持にかかるコストを削減することも期待できます。