## ベンサムの道徳と立法の諸原理序説の表現
ベンサムの『道徳と立法の諸原理序説』は、その表現においていくつかの特徴を持つ。
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明晰さと正確さを目指した表現
ベンサムは、自身の哲学と思想を明確に伝えるため、明晰で正確な表現を重視した。曖昧な言葉や比喩表現を避け、可能な限り客観的で論理的な記述を心がけている。これは、感情や主観に左右されない普遍的な道徳と立法の原理を確立しようとする彼の思想と密接に関係している。
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詳細な定義と分類
ベンサムは、議論の土台を固めるために、主要な概念を詳細に定義し、分類することに多くの労力を費やしている。例えば、「快楽」と「苦痛」といった基本的な概念はもちろんのこと、「共同体」「義務」「権利」など、倫理学や法哲学における重要な概念を厳密に定義しようと試みている。
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論理的な構成と展開
本書は、全体の構成が非常に論理的で、各章、各節が有機的につながっている点が特徴である。まず、人間の行動原理を「快楽」と「苦痛」に求め、そこから功利主義の原理を導き出す。そして、この原理に基づいて、立法、刑罰、政治制度など、幅広いテーマについて具体的な議論を展開していく。
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平易な文体
ベンサムは、学者だけでなく、一般の人々にも自分の思想を理解してもらいたいと考えていた。そのため、専門用語を必要最小限に抑え、平易な文体を用いるように努めている。ただし、複雑な概念を正確に表現するため、文章が長くなる傾向があり、現代の読者にとっては読みにくい箇所も見られる。
これらの特徴は、ベンサムが自身の思想を明確かつ体系的に提示することに強いこだわりを持っていたことを示していると言えるだろう。