## ベンサムの道徳と立法の諸原理序説の普遍性
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ベンサムの功利主義における普遍性の概念
ジェレミー・ベンサムの主著『道徳と立法の諸原理序説』(1789年) は、功利主義の基礎を築いた書物として知られています。彼の唱える功利主義は、「最大多数の最大幸福」という原則に基づき、人間の行動の善悪を判断することを特徴とします。
ベンサムは、快楽と苦痛こそが人間の行動の支配原理であると主張し、道徳や法律もこの原則に基づいて判断されるべきだと考えました。彼の思想において、「普遍性」は重要な概念であり、以下の3つの側面から考察することができます。
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1. 対象の普遍性: 全ての人間を平等に考慮
ベンサムの功利主義は、その適用範囲において普遍性を持ちます。彼は、社会的地位、性別、人種、国籍などを問わず、全ての人の幸福を平等に考慮すべきだと主張しました。
従来の道徳観の多くは、特定の集団や個人の利益を優先する傾向にありました。しかし、ベンサムは、個人の快楽と苦痛は等しく考慮されるべきであり、特定の集団の利益のために他の集団を犠牲にすることは許されないと考えました。
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2. 判断基準の普遍性: 快楽と苦痛
ベンサムは、人間の行動の善悪を判断する普遍的な基準として、「快楽と苦痛」を提唱しました。彼は、人間は本能的に快楽を求め、苦痛を避けるように行動すると考えました。
この考え方は、文化や時代の違いを超えて、すべての人間に共通する普遍的なものとして提示されました。
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3. 立法への応用:普遍的な法体系の構築
ベンサムは、功利主義の原則を立法に応用することを目指しました。彼の思想は、個人の自由を最大限に尊重しつつ、社会全体の幸福を最大化するような法体系の構築を目指していました。
ベンサムは、法律は社会全体の幸福を促進するために存在するべきであり、特定の個人や集団の利益のために利用されるべきではないと考えました。
これらの要素を通じて、ベンサムの『道徳と立法の諸原理序説』における普遍性の概念は、当時の社会における道徳観や法体系に大きな影響を与え、その後の社会改革や人権思想の発展にも貢献しました。