## ベンサムの道徳と立法の諸原理序説の思考の枠組み
ベンサムの『道徳と立法の諸原理序説』(1789年) は、功利主義の基礎を築いた重要な著作として知られています。この著作におけるベンサムの思考の枠組みは、以下の要素によって特徴付けられます。
1. 快楽と苦痛を基礎とする価値判断
ベンサムは、人間のあらゆる行動の目的は、最終的に快楽の獲得と苦痛の回避にあると主張しました。道徳や立法の原則も、この快楽と苦痛の原理に基づいて評価されるべきだと考えました。
2. 最大多数の最大幸福
ベンサムは、道徳や立法の目標を「最大多数の最大幸福」の実現に置きました。これは、可能な限り多くの人々に、可能な限り多くの快楽をもたらし、苦痛を減らすことを目指す原則です。
3. 快楽と苦痛の計算
ベンサムは、快楽と苦痛を定量化し、比較することを試みました。彼は、快楽と苦痛の強度、持続時間、確実性、近接性、多産性、純粋性、範囲といった要素を考慮することで、行為の道徳的な価値を計算できると考えました。
4. 法と制裁による社会の改善
ベンサムは、人間の行動は快楽と苦痛の原理に支配されているため、法と制裁によって人々の行動をコントロールし、社会全体の幸福を最大化できると考えました。刑罰は、犯罪による苦痛がもたらす不利益を上回るものであってはならないとし、効果的な立法と社会改革の必要性を説きました。