## ベンサムの道徳と立法の諸原理序説の分析
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ベンサムの功利主義思想
ベンサムの主著『道徳と立法の諸原理序説』(1789年)は、功利主義の基礎を築いた書物として知られています。この著作でベンサムは、「最大多数の最大幸福」という原則を提唱し、道徳と立法の根拠を人間の快楽と苦痛に求めました。
ベンサムによれば、人間は快楽を求め、苦痛を避けるように行動します。そして、行為の善悪は、それがもたらす快楽と苦痛の総計によって判断されるべきだと主張しました。つまり、より多くの人の幸福を増進させる行為は善であり、逆に、より多くの人の不幸を増大させる行為は悪であるとされます。
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快楽と苦痛の計算
ベンサムは、快楽と苦痛を定量化し、その総計を計算することによって、行為の善悪を客観的に判断できると考えました。彼は快楽と苦痛を測定するための7つの基準を提示しています。それは、
1. 強度
2. 持続性
3. 確実性
4. 近接性
5. 多産性(さらなる快楽を生み出す可能性)
6. 純粋性(苦痛を伴わない度合い)
7. 範囲(影響を受ける人の数)
です。
これらの基準を用いることで、異なる種類の快楽や苦痛を比較し、より多くの人の幸福に貢献する行為を選択することが可能になるとベンサムは考えました。
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立法への応用
ベンサムは、功利主義の原則を立法にも応用しようとしました。彼は、法律は個人の自由を制限するものであり、その正当性は、それが社会全体の幸福を増進させる場合にのみ認められると主張しました。
具体的には、刑罰については、それが犯罪を抑止し、社会全体の幸福を増進させる場合にのみ正当化されると考えました。また、経済活動においても自由放任を原則としつつも、市場メカニズムが機能しない場合には、政府による介入も必要であると考えました。
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影響と批判
ベンサムの功利主義は、19世紀イギリスの社会改革運動に大きな影響を与え、刑罰制度の改革や貧困対策などに貢献しました。彼の思想は、現代においても、倫理学や政治哲学、経済学などの分野で議論の対象となっています。
一方、ベンサムの功利主義は、個人の権利を軽視しているという批判や、快楽と苦痛を定量化することは不可能であるという批判も受けています。