ベンサムの道徳と立法の諸原理序説の位置づけ

## ベンサムの道徳と立法の諸原理序説の位置づけ

ベンサムの思想における位置づけ

ジェレミー・ベンサム（1748-1832）の主著『道徳と立法の諸原理序説』（An Introduction to the Principles of Morals and Legislation, 1789）は、彼の功利主義思想の基礎を築いた書物として位置づけられます。この著作でベンサムは、道徳と立法の唯一の基準として「最大多数の最大幸福」を提唱しました。

この著作は、ベンサムが構想していた、より網羅的な道徳と立法の体系の一部となる予定でした。しかし、計画は実現せず、序説のみが出版されました。それでも、本書はベンサムの思想のエッセンスが凝縮されており、彼の功利主義思想の展開において中心的な役割を果たしました。

功利主義の歴史における位置づけ

『道徳と立法の諸原理序説』は、功利主義の歴史においても重要な位置を占めています。ベンサム以前にも、快楽と苦痛を人間の行動の動機とする思想は存在しました。しかし、ベンサムはこれらの概念を体系化し、「最大多数の最大幸福」という明確なスローガンを掲げて、道徳と政治の基礎に据えようとしました。

この著作は、ジョン・スチュアート・ミルをはじめとする後世の功利主義思想家に大きな影響を与えました。また、功利主義は19世紀イギリスの社会改革運動の思想的支柱となり、貧困や刑罰などの社会問題に対する人々の意識を変革する上で重要な役割を果たしました。

現代社会における位置づけ

現代社会においても、『道徳と立法の諸原理序説』は、功利主義の古典として、またその思想的影響力の大きさから、政治学、倫理学、法哲学などの分野で重要なテキストとして読まれ続けています。

特に、政策決定における費用便益分析や、動物の権利運動における動物福祉の概念など、現代社会の様々な場面で、ベンサムの功利主義思想は影響を与え続けています。

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