ベルンハイムの催眠術の理論と実際の分析

## ベルンハイムの催眠術の理論と実際の分析

ベルンハイム（Hippolyte Bernheim, 1840-1919）は、フランスのナンシー学派を代表する医師であり、催眠術の研究で大きな功績を残しました。彼は、催眠現象を「暗示」によって説明することを試み、従来の「流体説」や「動物磁気説」といった神秘的な説明を否定しました。

ベルンハイムは、催眠状態は特殊な状態ではなく、**暗示に対する感受性が高まった状態**であると主張しました。そして、すべての人は多かれ少なかれ暗示を受けやすい性質を持っており、催眠状態はその性質が極端に高まった状態であると説明しました。

彼は、催眠状態を誘導するために、被験者に対して「まぶたが重くなる」「体が暖かくなる」といった暗示的な言葉を繰り返し語りかけました。そして、被験者が暗示を受け入れることで、実際にまぶたが重くなったり、体が暖かく感じられるようになると説明しました。

ベルンハイムは、催眠術を医療に応用することにも熱心に取り組みました。彼は、催眠暗示によって疼痛を軽減したり、心身症の症状を改善したりすることが可能であると主張し、実際に多くの患者に対して催眠療法を行いました。

ベルンハイムは、催眠術の実践においても独自の工夫を凝らしました。彼は、催眠状態を誘導するために、被験者に対して直接的な命令ではなく、**間接的な暗示**を用いることを重視しました。

例えば、被験者に腕を上げるように指示する代わりに、「腕が軽くなったと感じませんか？」と語りかけ、被験者が自発的に腕を上げるように仕向けました。このような間接的な暗示を用いることで、被験者の抵抗感を和らげ、より自然な形で催眠状態を誘導できると考えたのです。

また、ベルンハイムは、催眠状態の深さについても、従来の考え方とは異なる見解を示しました。彼は、催眠状態の深さは、被験者が暗示を受け入れる度合いによって異なると考えました。

そして、深い催眠状態に入らなくても、軽い催眠状態であっても、暗示によって治療効果を得ることが可能であると主張しました。