## ベルンハイムの催眠術の理論と実際の位置づけ
ベルンハイムと催眠術
19世紀のドイツの医師、**ハイポリット・ベルンハイム**(1809-1867)は、催眠術の発展に重要な役割を果たした人物として知られています。彼は、それまで神秘主義や動物磁気説と結びつけられていた催眠現象を、科学的な視点から捉え直そうと試みました。
ベルンハイムの理論:暗示の力
ベルンハイムは、催眠状態は特殊な磁気や神秘的な力によるものではなく、**暗示**によって引き起こされると考えました。彼の理論の核となるのは、**暗示への感受性の個人差**です。ベルンハイムは、人によって暗示にかかりやすい人とそうでない人がいると主張し、催眠状態とは、暗示にかかりやすい人が、催眠誘導によって意識を集中させられた状態であると説明しました。
ベルンハイムの実践:ナンシー学派との対立
ベルンハイムは、催眠誘導の方法として、被験者の目の前で光るものを見せ続けたり、反復的な音声を聞かせたりする方法を採用しました。彼は、これらの刺激によって被験者の意識が集中し、暗示を受け入れやすくなると考えていました。しかし、ベルンハイムの死後、フランスのナンシーで活躍した**リボ**や**ベルネーム**といった研究者たちは、催眠状態は特別な技術を用いなくても、言葉による暗示だけで誘導できると主張し、ベルンハイムの方法を否定しました。ナンシー学派は、催眠現象を普遍的な心理現象として捉え、誰でも催眠状態になり得ると考えました。
ベルンハイムの功績と限界
ベルンハイムの理論は、後の時代の催眠研究に大きな影響を与えました。特に、暗示の重要性を強調した点は、現代の催眠療法の基礎となっています。しかし、暗示への感受性の個人差に関する彼の主張は、後の研究によって、必ずしもすべての人が催眠にかかりやすいわけではなく、訓練によって催眠にかかりやすくなる人もいることが示唆されており、現在では絶対的なものではないとされています。
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