ベルクソンの時間と自由を読んだ後に読むべき本
ジル・ドゥルーズ – 差異と反復
アンリ・ベルクソンの『時間と自由』を読み終え、その難解ながらも魅力的な持続と自由意志の探求に心を奪われた読者にとって、次に進むべき道は決して一つではありません。しかし、ベルクソンの哲学が切り開いた豊かな地平をさらに深く探求したいと願うならば、ジル・ドゥルーズの主著『差異と反復』は、まさにうってつけの一冊と言えるでしょう。
ドゥルーズは、20世紀フランスを代表する哲学者の一人であり、その思想は、哲学、文学、映画、芸術など、多岐にわたる分野に影響を与えました。彼は、ベルクソンの哲学を深く継承し、さらに発展させた思想家としても知られています。特に、『差異と反復』は、ベルクソンの持続の概念をさらに深化させ、西洋哲学の根幹をなす同一性の思考に対して、果敢な挑戦状を叩きつけた記念碑的作品です。
本書においてドゥルーズは、差異こそが、あらゆる存在の根源的な原理であると主張します。彼は、伝統的な哲学が、同一性に基づいて世界を理解しようとしてきたことを批判し、真の存在は、絶えず変化し続ける差異の運動の中にこそ見出されるべきだと説きます。
ドゥルーズは、ベルクソンの持続の概念を援用しながら、差異が反復を通じて、絶えず新しいものを創造していくプロセスを明らかにしようと試みます。彼は、この反復を、単なる同一のものの繰り返しではなく、「差異を伴う反復」として捉え直します。つまり、反復は、常に新しいコンテクストの中で行われ、その度に差異を生み出しながら、世界を豊かに変化させていく力を持つというのです。
『差異と反復』は、決して読みやすい本ではありません。しかし、ベルクソンの哲学に魅了された読者であれば、ドゥルーズの思想世界に足を踏み入れることで、さらに深遠で刺激的な思考の冒険へと旅立つことができるはずです。彼の哲学は、既存の概念を解体し、新たな視点から世界を捉え直すことを促します。それは、容易な理解を拒む挑戦的な試みであると同時に、私たち自身の思考の限界を超え、世界に対するより深い洞察を獲得するための、他に類を見ない貴重な機会を与えてくれるものでもあるのです。