## ベルクソンの時間と自由の評価
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出版と影響
「時間と自由」は、アンリ・ベルクソンの最初の主要な哲学書として1889年に “Essai sur les données immédiates de la conscience” (意識の直接的な与えられたものについての試論)というタイトルで出版されました。この作品は、ベルクソンの名を一躍有名にし、時間、自由意志、経験に関する彼の革新的なアイデアは、20世紀初頭のフランス哲学界に大きな影響を与えました。
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主要な論点
この作品でベルクソンが展開する主要な論点は、時間と自由に関する伝統的な哲学的理解に対する批判です。彼は、時間の本質を空間化されたものとして捉える科学的・決定論的な見方を批判し、意識の直接的な経験に基づいた、持続として理解される質的に異なる時間の概念を提唱しました。
ベルクソンは、私たちが経験する時間は、均質で分割可能な瞬間の連続としてではなく、質的に異なる瞬間が互いに浸透し、不可分に結びついた連続体、すなわち「持続」として経験されると主張しました。彼は、この持続こそが自由の源泉であると考えました。なぜなら、過去は現在の中に生き続け、現在における私たちの選択に影響を与えるからです。
また、ベルクソンは、自由意志の問題についても独自の視点を提示しました。彼は、自由意志は事前に決定されたものでも、完全にランダムなものでもないと主張しました。彼によれば、真の自由とは、過去の経験と現在の状況に基づいて、創造的かつ予測不可能な方法で行動する能力を意味します。
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批判と評価
ベルクソンの「時間と自由」は、出版以来、賞賛と批判の両方を受けてきました。彼の作品は、時間と自由に関する伝統的な見方に疑問を呈し、意識の経験に焦点を当てることで、現象学や実存主義などの20世紀の哲学運動に影響を与えました。
一方で、ベルクソンの哲学、特に彼の持続の概念は、その曖昧さと経験主義的な性格から批判されてきました。批評家の中には、彼の思想は神秘主義的で、経験科学と両立しない、あるいは自由意志の問題に対する明確な解決策を提供していないと主張する人もいます。