## ベルクソンの時間と自由の技法
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持続と直観
ベルクソンは、人間の意識体験を説明する上で、「持続」という概念を重視します。持続とは、過去から現在、そして未来へと絶え間なく流れ行く、意識の動的な流れを指します。彼は、伝統的な哲学や科学が時間を空間化し、静的な点の連続として捉えていることを批判します。ベルクソンにとって、時間は分割不可能な流れであり、各瞬間は過去と未来を含んでいます。
この持続を捉えるための方法として、ベルクソンは「直観」を提唱します。直観とは、分析的思考や概念化を用いずに、対象に直接的に寄り添い、その内奥を捉える認識方法です。持続は、分析的な思考では捉えきれない、生きている経験としてのみ把握できるものであり、直観こそが持続を捉えるための唯一の方法なのです。
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イメージと象徴
ベルクソンは、直観によって捉えられた持続を表現するために、イメージや象徴を多用します。抽象的な概念や論理的な分析だけでは、持続の豊かさや流動性を表現することはできません。彼は、具体的なイメージや比喩を用いることで、読者の直観に訴えかけ、持続を体感させようと試みます。
例えば、彼は持続を説明する際に、「メロディー」や「雪だるまが転がり落ちる様子」といったイメージを用います。これらのイメージは、論理的な説明では表現できない、持続の動的な側面を感覚的に理解させてくれます。
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自由とエラン・ヴィタール
ベルクソンは、持続と密接に関連する概念として、「自由」を論じます。彼は、伝統的な決定論や自由意志論の二項対立を超え、人間の自由を「創造的な発展」として捉え直します。
彼によれば、真の自由とは、過去の束縛から解放され、全く新しい未来を創造していく力です。そして、この創造的な発展を駆り立てる力こそが、「エラン・ヴィタール(生命の躍動)」です。エラン・ヴィタールは、生命全体を貫く創造的な衝動であり、絶えず新しいものを生み出し続けようとする力です。
ベルクソンは、持続と直観という方法を通して、人間の自由を、生命の創造的な発展として描き出そうとしたのです。