## ベルクソンの創造的進化
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ベルクソンの進化論における「選択」の位置づけ
アンリ・ベルクソンは、その代表作『創造的進化』(1907年)において、独自の進化論を展開しました。彼は、進化を生命の「創造的発展」として捉え、ダーウィンの自然選択説を批判的に継承しました。ベルクソンにとって、「選択」は進化の主要なメカニズムではなく、むしろ生命の創造性を制限する消極的な要因として位置づけられます。
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ダーウィン的「選択」への批判
ベルクソンは、ダーウィンの自然選択説における「選択」の概念を、あくまでも「消極的な淘汰」として理解しました。ダーウィン説では、環境に適応した変異だけが「選択」され、生存競争を勝ち抜くとされます。しかし、ベルクソンは、このような「選択」だけでは、生命の進化に見られるような多様性や複雑性を十分に説明できないと主張しました。
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生命の「内的衝動」と「創造的進化」
ベルクソンは、進化の真の原動力は、生命自身が持つ「生の躍動(élan vital)」と呼ばれる「内的衝動」であると考えました。この「生の躍動」こそが、生命に絶え間ない創造的発展をもたらす源泉であるとされます。進化は、環境への適応という受動的な過程ではなく、「生の躍動」という内的衝動によって駆動される能動的な過程であるとベルクソンは主張しました。
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「選択」の限定的な役割
ベルクソンは、「選択」の役割を完全に否定したわけではありません。彼は、「選択」が進化の方向性を限定し、生命の創造性を特定の枠組みへと導く働きを持つことを認めました。しかし、あくまでもそれは二次的な役割に過ぎず、進化の真の原動力となる「生の躍動」に取って代わるものではないとベルクソンは強調しました。