## ベルクソンの創造的進化の原点
ベルクソンの問題意識
アンリ・ベルクソン(1859-1941)は、20世紀初頭のフランスを代表する哲学者の一人です。当時、自然科学、特にダーウィンの進化論が大きな影響力を持つ中で、ベルクソンは生命や進化を既存の科学の枠組みだけで捉えきれるのかという問題意識を抱いていました。
既存の進化論への批判
ベルクソンは、ダーウィンの進化論を完全に否定したわけではありませんでした。彼は、ダーウィニズムが生物の進化を説明する上で重要な貢献をしたことを認めていました。しかし、ダーウィニズムが、進化を偶然の変異と自然選択というメカニズムで説明しようとする点に限界を感じていました。ベルクソンは、生命の進化は、もっと創造的で、予測不可能なものであると考えました。
生の哲学
ベルクソンの哲学の根幹には、「生の哲学」と呼ばれる立場があります。彼は、生命を、絶えず変化し続ける流れである「持続」として捉え、「持続」こそが現実の本質であると考えました。
「エラン・ヴィタール」と創造的進化
ベルクソンは、生命を駆り立てる力として「エラン・ヴィタール」(生の躍動)という概念を提唱しました。「エラン・ヴィタール」は、生命に内在する創造的な衝動であり、進化はこの「エラン・ヴィタール」の活動によって起こると考えました。進化は、あらかじめ決められた方向に向かうのではなく、「エラン・ヴィタール」の創造的な活動によって、常に新しい方向へ、予測不可能な形で展開していくものとしたのです。
影響を受けた思想家
ベルクソンの思想は、古代ギリシャの哲学者プラトンのイデア論や、19世紀の哲学者スピノザ、ショーペンハウアーなど、様々な思想家の影響を受けています。特に、進化論については、ダーウィンだけでなく、ラマルクの「獲得形質の遺伝」の概念からも影響を受けていると言われています。
これらの要素が複雑に絡み合い、ベルクソンの「創造的進化」という独自の進化論が形成されました。