## ベルクソンの創造的進化とアートとの関係
###
ベルクソンの「持続」とアートにおける直感的把握
アンリ・ベルクソンは、著書『創造的進化』の中で、生命を駆り立てる力として「生の躍動（elan vital）」という概念を提唱しました。これは、絶えず変化し続ける力であり、新しい形態や多様性を生み出す源泉です。ベルクソンにとって、この創造的な力は、私たちが理性によって世界を分析し、概念化する際に用いる知性とは異なるものです。
ベルクソンは、私たちが世界を真に理解するためには、知性を超えた直感的な把握が必要であると主張しました。彼は、この直感的な把握を可能にするものとして、「持続（durée）」という概念を提唱します。持続とは、客観的な時間とは異なり、私たちの意識の中で流れる、質的に変化し続ける主観的な時間のことです。
アートは、ベルクソンの哲学において重要な位置を占めます。彼は、アートこそが、この直感的な把握を最も純粋な形で表現するものだと考えました。芸術家は、知性によって世界を分析するのではなく、直感によって生の躍動を捉え、それを作品に表現します。
###
芸術における「生の躍動」の表現
ベルクソンは、芸術作品は、静的なイメージや言葉によって、生の躍動、すなわち絶えず変化し続ける力そのものを表現することができると考えました。絵画、彫刻、音楽、文学など、あらゆる芸術作品は、独自の形式によって、この動的な力を表現することができます。
例えば、絵画においては、色彩や形態の組み合わせによって、動きや変化が表現されます。音楽においては、音の高低やリズムの変化によって、感情の動きや時間の流れが表現されます。文学においては、言葉によって、登場人物の内的世界や物語の時間的な展開が表現されます。
###
アートと直感の共有
ベルクソンにとって、アートは単なる娯楽や装飾ではなく、私たちに世界の真の姿を啓示する重要な役割を担っています。芸術作品に接することで、私たちは、日常生活においては意識することのない生の躍動を直感的に把握することができます。
芸術家は、自身の直感によって生の躍動を捉え、それを作品に定着させます。そして、鑑賞者は、作品を通して芸術家の直感を共有することで、自らの直感を呼び覚まされ、世界に対する新たな視点を得ることができるのです。