## ベネディクトの文化の型の光と影
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文化相対主義の先駆的な視点
ルース・ベネディクトは、その代表作『文化の型』において、文化を「個人が所属する社会によって学習される行動様式」と定義し、それぞれの文化は固有の価値観や規範を持つ独立した全体として理解されるべきだと主張しました。これは、自文化中心主義的な偏見を排し、あらゆる文化を対等なものとして尊重する**文化相対主義**の先駆的な視点として評価されています。
ベネディクトは、ニューギニアのドーブー族、北アメリカ先住民のズニ族、そして現代アメリカ文化を比較研究することで、それぞれの文化が独自の「型」、すなわち行動様式や思考パターンを持っていることを明らかにしました。例えば、ドーブー族は猜疑心が強く、競争を重視する文化を持つ一方、ズニ族は協調性や平和を重んじる文化を形成しています。ベネディクトは、このような文化の多様性を具体的な事例に基づいて示すことで、文化相対主義の重要性を訴えかけました。
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文化の固定化とステレオタイプ
一方で、ベネディクトの文化の型は、文化を静的なものとして捉えすぎているという批判もあります。文化は時代とともに変化していくものであり、一括りに「型」にはめることはできません。また、文化内部の多様性も考慮されておらず、特定の文化に属する人々が皆同じような行動パターンを持つと決めつけることは、ステレオタイプを生み出す危険性も孕んでいます。
さらに、ベネディクトの文化相対主義は、道徳的相対主義に繋がるとの批判もあります。文化によって善悪の基準が異なるのであれば、人権侵害や差別など、普遍的に否定されるべき行為も正当化されかねないという懸念です。
これらの光と影を踏まえ、現代においてベネディクトの文化の型をどのように捉え、発展させていくべきかが問われています。