## ベネディクトの文化の型からの学び
文化の相対性
ルース・ベネディクトの『文化の型』は、文化人類学における古典として、文化の相対性という概念を広く知らしめました。ベネディクトは、本書の中で、文化を「共有された行動や思考のパターン」と定義し、それぞれの文化は独自の価値観や規範、習慣を持つと主張しました。
彼女は、北アメリカのズニ族、メラネシアのドブ族、そしてクアラ島のクマグリ族という三つの異なる文化を比較研究することで、文化が人間の行動や思考に大きな影響を与えていることを示しました。
例えば、ズニ族は穏やかで協調性を重んじる文化を持ち、競争や自己主張を抑制する傾向がありました。一方、ドブ族は猜疑心が強く、常に敵対的な行動をとる傾向が見られました。そして、クマグリ族は、西洋社会の価値観とは大きく異なり、所有や富への執着を持たず、浪費や贈与を美徳とする文化を形成していました。
これらの事例を通して、ベネディクトは、ある文化においては正常とされる行動が、別の文化においては異常とみなされる可能性を示し、文化を絶対的な尺度で評価することの危険性を指摘しました。
文化と個人の関係性
ベネディクトは、文化と個人の関係性についても考察を深めました。彼女は、個人の人格は、その人が属する文化によって大きく規定されると主張しました。
文化は、個人が生まれてから成長する過程において、周囲の人々との相互作用を通して内面化されていきます。そして、その文化特有の価値観や規範、行動様式は、個人の行動や思考パターンに深く影響を与えるようになります。
しかし、ベネディクトは、文化による個人への影響は絶対的なものではなく、個人が文化を乗り越えて独自の行動をとる可能性も示唆しています。文化は、個人の行動を規定する枠組みを提供する一方で、個人の主体性や創造性を完全に排除するものではありません。
文化理解の重要性
『文化の型』は、異なる文化に対する理解の重要性を説いています。ベネディクトは、自文化中心主義、つまり自身の文化を基準に他の文化を評価する態度は、誤解や偏見を生み出す可能性があると指摘しました。
異なる文化を理解するためには、それぞれの文化が持つ独自の価値観や歴史、社会構造などを客観的に理解する努力が不可欠です。そして、文化の違いを認め、尊重することで、異文化間での共存や相互理解が可能になるとベネディクトは主張しました。