## ベックの危険社会の話法
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近代化の論理における逆説
ベックは、近代社会が発展するにつれて、伝統的な社会秩序や価値観が崩壊し、個人主義や合理主義が台頭していく過程を「近代化」と捉えています。そして、この近代化がもたらす恩恵と同時に、新たなリスクや不安定さも生み出すようになると指摘しました。
例えば、科学技術の進歩は、生活水準の向上や医療の進歩といった恩恵をもたらす一方で、環境破壊や大量破壊兵器の開発といった新たなリスクも生み出しました。また、経済のグローバル化は、人々の選択肢を広げ、新たな機会を提供する一方で、経済格差の拡大や雇用の不安定化といった問題も引き起こしています。
このように、近代化は「進歩」と「リスク」という相反する側面を同時に持ち合わせています。ベックは、この近代化の論理そのものに内在する逆説的な構造に注目し、これを「危険社会」と呼びました。
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リスク社会における「 reflexive modernization」
ベックは、リスク社会においては、人々が自らリスクを認識し、それに対処していく必要性を強調しました。彼は、このようなリスク社会における近代化のあり方を「reflexive modernization(反省的近代化)」と呼びました。
従来の近代化が、経済成長や科学技術の進歩といった「進歩」を一方的に推し進めるものであったのに対し、「反省的近代化」は、人々がリスクを認識し、そのリスクをコントロールするために、社会システムや価値観を自ら変革していくことを目指すものです。
例えば、環境問題に対する意識の高まりは、人々が経済成長のみに価値を置くのではなく、環境保護とのバランスを重視するようになった結果と言えます。これは、人々が環境リスクを認識し、そのリスクを軽減するために、自身の価値観や行動を変容させた結果であり、「反省的近代化」の一例と言えるでしょう。