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ベイトソンの精神の生態学の構成

## ベイトソンの精神の生態学の構成

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第Ⅰ部 メタログ

第Ⅰ部は、本書全体に通底する「メタレベルからの思考」という視点を提示する部分です。ベイトソン自身の学問的遍歴を振り返りつつ、生物学、精神医学、進化論といった多様な分野における問題点を指摘し、それらを貫く共通の論理として「サイバネティクス」と「システム論」の重要性を説きます。

第1章「導入」では、本書全体の内容を概観し、部分ではなく全体を見ることの重要性を強調します。また、精神と自然、主体と客体を分離する西洋的な思考様式を批判し、両者を包括的に捉える新たな枠組みの必要性を訴えます。

続く章では、進化論における「目的論」の問題や、精神医学における「心身二元論」の問題を取り上げ、線形的な因果関係に基づく従来の説明の限界を指摘します。そして、自己調整機能を持つシステムとして生物や精神を捉え直すことで、これらの問題を解決する糸口を探ります。

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第Ⅱ部 進化論からの形式

第Ⅱ部では、第Ⅰ部で提示された「システム論」的な思考に基づき、進化論を新たな視点から捉え直します。ダーウィンの自然選択説を基盤としつつも、遺伝子レベルではなく、生物と環境の相互作用というより包括的なレベルから進化のメカニズムを考察します。

具体的には、生物の学習と進化の関係に着目し、両者が「情報」という共通の概念で理解できることを示します。生物は環境との相互作用を通して情報を学習し、その情報が遺伝子にフィードバックされることで進化が生じるとベイトソンは考えます。

また、生物のコミュニケーションに着目し、その進化における役割を分析します。特に、遊びにおけるメタコミュニケーションの重要性を指摘し、それが複雑な社会構造や文化の進化に繋がったと論じます。

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第Ⅲ部 形の形成

第Ⅲ部は、生物の形態形成、生理、行動といった具体的な現象に焦点を当て、それらが「システム論」的な視点からどのように理解できるのかを考察します。特に、個体発生と系統発生の関係、遺伝と環境の相互作用、神経系の可塑性といったテーマを扱います。

ベイトソンは、生物の形態は遺伝情報だけで決定されるのではなく、環境との相互作用を通して動的に形成されると考えます。また、神経系は外部からの刺激に対して受動的に反応するのではなく、能動的に情報を処理し、環境に適応するように構造を変化させると主張します。

このように、第Ⅲ部では、生物を「自己組織化」するシステムとして捉え、その動的なプロセスを理解することを目指します。

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第Ⅳ部 生態学と人間

第Ⅳ部では、それまでの議論を踏まえ、人間存在と自然環境との関係について考察します。人間もまた、生物の一種として生態系の一部であり、その行動は自然環境と相互に影響し合っていることを強調します。

特に、現代社会における環境問題を取り上げ、それが人間の思考様式と密接に関係していることを指摘します。西洋的な二元論的な思考様式が、人間と自然を分離し、自然を支配の対象とみなす態度を生み出したとベイトソンは批判します。

そして、環境問題を解決するためには、人間中心主義的な思考様式を転換し、人間と自然を包括的に捉える「生態学的」な倫理を確立する必要があると訴えます。

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