ヘミングウェイの老いと海の発想
ヘミングウェイの経験
ヘミングウェイは1936年からキューバに住み始め、漁師たちとの交流を通して海の厳しさと魅力に惹かれていきました。彼自身も熱心な釣り人で、カジキ釣りにも挑戦していました。こうした実体験が、老漁師と巨大カジキの格闘という物語の核を形成したと考えられます。
「青い水の上の男」の存在
ヘミングウェイは、1936年4月に雑誌「エスクァイア」に「青い水の上の男」という短編を発表しています。これは、キューバ沖で巨大カジキと格闘し、サメに襲われて成果を持ち帰れなかった漁師の話です。この作品は「老人と海」の原型とされており、構想の初期段階において重要な役割を果たしたと考えられます。
執筆の背景
ヘミングウェイは「誰がために鐘は鳴る」を発表した後、長いスランプに陥っていました。彼は「老人と海」を、自分自身の創作力の復活を賭けた作品として構想していたと言われています。また、第二次世界大戦後の社会における人間の存在意義や、自然との関係といった普遍的なテーマを、シンプルな物語の中に凝縮しようと試みていたことも伺えます。