## ヘミングウェイの武器よさらばを深く理解するための背景知識
第一次世界大戦とイタリア戦線
ヘミングウェイの「武器よさらば」は、第一次世界大戦中のイタリア戦線を舞台としています。第一次世界大戦は、1914年から1918年にかけてヨーロッパを中心に戦われた世界規模の戦争です。この戦争は、ヨーロッパ列強の帝国主義的な対立、民族主義の高まり、同盟関係の複雑化など、さまざまな要因が絡み合って勃発しました。
イタリアは、当初は三国同盟(ドイツ、オーストリア=ハンガリー、イタリア)に属していましたが、1915年に連合国側(イギリス、フランス、ロシアなど)に参戦しました。イタリアの参戦理由は、オーストリア=ハンガリー帝国領であった未回収のイタリアと呼ばれる地域の領有を目的としたためです。
イタリア戦線は、主にイタリア北東部とオーストリア=ハンガリー帝国との国境地帯で展開されました。アルプス山脈など険しい地形での戦闘が多く、塹壕戦が長期化しました。イタリア軍は、オーストリア=ハンガリー軍に対して劣勢であり、多くの犠牲者を出すことになりました。
ヘミングウェイ自身も、1918年に赤十字の救急車の運転手としてイタリア戦線に赴き、負傷を経験しています。この経験は、「武器よさらば」の執筆に大きな影響を与えており、作中に描かれる戦闘シーンや負傷兵の描写は、ヘミングウェイ自身の体験に基づいたリアリティを持っています。
失われた世代
第一次世界大戦は、ヨーロッパ社会に大きな傷跡を残しました。戦争によって、多くの人々が命を落とし、社会は疲弊し、人々の価値観は大きく揺らぎました。
特に、戦場で青春時代を過ごした若い世代は、戦争の悲惨な体験によって、従来の道徳や価値観に幻滅し、将来への希望を失いました。このような世代は、「失われた世代」と呼ばれています。
ヘミングウェイも「失われた世代」の一人とされています。「武器よさらば」の主人公であるフレデリック・ヘンリーも、戦争の無意味さを痛感し、愛するキャサリンとの逃避行を通して、戦争から逃れようとする「失われた世代」の若者を象徴しています。
ヘミングウェイの文体
ヘミングウェイは、簡潔で無駄のない文体で知られています。彼の文体は、ハードボイルドスタイルとも呼ばれ、感情的な表現を抑え、客観的な描写を重視しています。
「武器よさらば」でも、ヘミングウェイの特徴的な文体が用いられています。例えば、戦闘シーンや負傷の描写は、残酷な描写を避けつつも、読者に強い印象を与えるように描かれています。
また、ヘミングウェイは、登場人物の心理描写を直接的に行うのではなく、彼らの行動や会話を通して、間接的に表現する手法を用いています。
このようなヘミングウェイの文体は、「失われた世代」の虚無感や disillusionment を表現するのに適しており、「武器よさらば」のテーマを効果的に伝える役割を果たしています。
禁酒法時代
「武器よさらば」の舞台となる1910年代後半から1920年代前半は、アメリカでは禁酒法が施行されていました。禁酒法は、アルコール飲料の製造、販売、輸送を禁止する法律で、1920年から1933年まで施行されました。
禁酒法は、道徳的な理由からアルコールの消費を抑制することを目的としていましたが、実際には密造酒や密売が横行し、 organized crime が勢力を拡大するなど、多くの問題を引き起こしました。
「武器よさらば」では、主人公のフレデリック・ヘンリーが、戦場から逃れてスイスに亡命した後、キャサリンと酒を飲むシーンが描かれています。これは、禁酒法時代のアメリカ社会を風刺的に描いたものと解釈することもできます。
赤十字
ヘミングウェイは、第一次世界大戦中に赤十字の救急車の運転手としてイタリア戦線に赴任しました。赤十字は、戦争や災害の際に、人道的な支援活動を行う国際機関です。
ヘミングウェイは、赤十字での活動を通して、戦争の悲惨さを目の当たりにしました。この経験は、「武器よさらば」の執筆に大きな影響を与えており、作中には赤十字の活動や負傷兵の描写が多く登場します。
また、ヘミングウェイは、赤十字の活動を通して、人道主義や国際協力の重要性を認識しました。このことは、彼の後の作品にも影響を与えています。
これらの背景知識を踏まえることで、「武器よさらば」をより深く理解することができます。
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読書意欲が高いうちに読むと理解度が高まります。