## ヘミングウェイのキリマンジャロの雪に関連する歴史上の事件
### ヘミングウェイと第一次世界大戦
アーネスト・ヘミングウェイは、第一次世界大戦が勃発した1914年に15歳でした。彼は戦争に強く惹かれ、1918年に赤十字隊の救急車運転手として従軍するためにヨーロッパへ向かいました。
イタリア戦線で従軍中、ヘミングウェイはオーストリア軍の迫撃砲の攻撃を受け重傷を負いました。この経験は彼に深いトラウマを残し、後の作品に大きな影響を与えました。
「キリマンジャロの雪」の主人公であるハリー・ストリートは、作家であり、アフリカでサファリ中に壊疽にかかり死を待つばかりという設定です。彼は過去を振り返り、戦争を含めた様々な経験を思い起こします。
ヘミングウェイ自身も戦争で受けた肉体的、精神的な傷に生涯苦しめられました。「キリマンジャロの雪」は、戦争がもたらす虚無感や喪失感を描き出し、ヘミングウェイ自身の戦争体験と深く結びついている作品と言えるでしょう。
### ヘミングウェイと「失われた世代」
第一次世界大戦後、ヘミングウェイはパリに移り住み、そこでガートルード・スタインやエズラ・パウンドなどの作家や芸術家と交流を深めました。彼らは「失われた世代」と呼ばれ、戦争によって伝統的な価値観や信念を見失った世代として描かれました。
「失われた世代」の作家たちは、戦争の悲惨さや、戦後の社会における精神的な空虚感を作品に表現しました。ヘミングウェイの作品にも、戦争によって傷ついた登場人物や、目的を見失い、退廃的な生活を送る人々が描かれています。
「キリマンジャロの雪」のハリーもまた、「失われた世代」を象徴する人物と言えるでしょう。彼は作家としての才能を持ちながら、それを活かしきることができずにいます。彼は過去に囚われ、後悔と失望の中で死を迎えます。
### 1920年代のモダニズムとヘミングウェイの簡潔な文体
ヘミングウェイが作家として活躍した1920年代は、モダニズムの時代でした。モダニズムは、伝統的な芸術の形式や表現方法を打破しようとする芸術運動です。
文学においては、ジェームズ・ジョイスやT・S・エリオットなどが、意識の流れや象徴主義を用いた複雑な作品を生み出しました。ヘミングウェイは、そうした複雑な表現とは対照的に、簡潔で直接的な文体を特徴としています。
ヘミングウェイの簡潔な文体は、無駄を削ぎ落とした表現によって、登場人物の心理や情景をより鮮明に浮かび上がらせる効果を持っています。「キリマンジャロの雪」でも、無駄のない描写が、ハリーの絶望的な状況や、アフリカの雄大な自然の対比を際立たせています。
### 植民地主義とアフリカのイメージ
「キリマンジャロの雪」の舞台であるアフリカは、20世紀初頭には、多くのヨーロッパ諸国によって植民地化されていました。当時のヨーロッパ社会では、アフリカは未開の地、冒険の地として認識されており、多くの探検家や冒険家がアフリカを目指しました。
ヘミングウェイ自身も、1930年代にアフリカで狩猟旅行を経験し、その体験を作品に書いています。「キリマンジャロの雪」では、アフリカの雄大な自然が、ハリーの死の影と対比をなして描かれています。
一方で、ヘミングウェイの作品におけるアフリカのイメージは、植民地主義的な視点からの批判も受けています。アフリカの人々や文化は、あくまで風景の一部として描かれており、主人公の心の内面を映し出すための舞台装置として機能しているという指摘もあります。