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ヘッブの行動の機構を読む

## ヘッブの行動の機構を読む

「ヘッブの行動の機構」の概要

ドナルド・O・ヘッブが1949年に発表した著書「The Organization of Behavior: A Neuropsychological Theory」(邦題:ヘッブの行動の機構)は、学習と記憶の神経メカニズムに関する先駆的な理論を提示した重要な書籍です。ヘッブは、心理学と神経科学の統合を目指し、行動主義心理学が支配的であった時代に、脳内の神経細胞の活動と相互作用によって行動が形作られると主張しました。

ヘッブの学習則

本書の中心的な概念は、「ヘッブの学習則」として知られる神経細胞間の結合強度に関する仮説です。ヘッブは、「一緒に発火するニューロンは結合を強める」という原則を提唱しました。これは、神経細胞Aの軸索が神経細胞Bを繰り返し興奮させ、その発火を引き起こす場合、AとBの間のシナプス結合が強化されることを意味します。この学習則は、経験を通じて脳内の神経回路がどのように変化し、学習や記憶が形成されるかを説明する上で重要な基盤となりました。

細胞集成と位相配列

ヘッブは、学習と記憶の神経基盤として、「細胞集成」と「位相配列」という概念を提唱しました。細胞集成は、特定の感覚入力や行動出力に反応して同時に活動する神経細胞の集団です。繰り返し活性化されることで、細胞集成内のニューロン間の結合が強化され、特定の刺激に対する反応が強化または学習されます。

位相配列は、複数の細胞集成が時間的に連続して活性化されることで形成される、より複雑な神経活動のパターンです。これは、一連の感覚入力や行動出力を学習する際に重要であり、例えば、一連の動作を伴う運動スキルなどが該当します。

本書の影響と評価

「ヘッブの行動の機構」は、神経科学、心理学、人工知能などの分野に多大な影響を与えました。特に、ヘッブの学習則は、後の神経科学研究の基礎となり、長期増強(LTP)などの神経可塑性のメカニズムの発見に貢献しました。

しかし、本書は出版から70年以上が経過しており、その後の神経科学の進歩によって、ヘッブの理論の一部は修正や拡張が必要となっています。例えば、ヘッブは神経細胞間の結合強化にのみ着目していましたが、近年の研究では、結合の弱化も学習に重要な役割を果たすことが明らかになっています。

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