ヘッブの行動の機構の発想
神経細胞集合体
1949年、カナダの心理学者ドナルド・ヘッブは、著書”The Organization of Behavior”の中で、学習と記憶の神経メカニズムに関する革新的な仮説を発表しました。 これは後に「ヘッブの法則」として知られるようになり、神経科学の分野に大きな影響を与えました。
ヘブの法則
ヘッブは、行動主義心理学が主流であった時代に、脳内の神経細胞の活動に着目しました。 彼は、学習と記憶は、神経細胞間のシナプスの結合強度が変化することで起こると考えました。
ヘッブの法則は、「一緒に発火するニューロンは、共に配線される」(“Neurons that fire together, wire together”)と表現されます。 これは、神経細胞Aの軸索が神経細胞Bを興奮させるのに十分近く、繰り返し、持続的に関与している場合、AとBのいずれか一方または両方に成長過程または代謝変化が生じ、AからBへの信号伝達の効率が増強されることを意味します。
細胞集合体
ヘッブは、複数の感覚細胞が同時に興奮することで、脳内に特定の感覚入力に対応した「細胞集合体(cell assembly)」が形成されると考えました。 細胞集合体は、特定の対象や概念を表現する神経細胞のネットワークであり、このネットワーク内のシナプス結合が強化されることで、その対象や概念の記憶が形成されると考えました。
位相系列
さらに、ヘッブは、細胞集合体が時間的に連続して活動することで、「位相系列(phase sequence)」が形成されると考えました。 位相系列は、一連の行動や思考パターンを表現する神経細胞のネットワークであり、細胞集合体と同様に、このネットワーク内のシナプス結合が強化されることで、その行動や思考パターンの記憶が形成されると考えました。
ヘッブの法則は、学習と記憶の神経メカニズムを説明する上で重要な概念となり、その後の神経科学研究に大きな影響を与えました。