プーシキンの大尉の娘の周辺
プーシキンの時代背景
アレクサンドル・セルゲーエヴィチ・プーシキン（1799-1837）は、ロシアの国民的詩人とされ、近代ロシア文学の創始者の一人とされています。彼は小説、短編小説、詩、戯曲、歴史書など、幅広い作品を残しました。プーシキンは、帝政ロシアの激動の時代に生きており、彼の作品はしばしば、当時の社会、政治、文化を反映しています。
「大尉の娘」の執筆背景
「大尉の娘」は、プーシキンの最後の散文作品であり、1836年に発表されました。この小説は、1762年から1775年にかけて発生したプガチョフの乱を背景としています。エメリヤン・プガチョフは、ドン・コサックの出身で、自身をピョートル3世（1762年に暗殺された皇帝）と僭称し、農民の支持を得て反乱を起こしました。
プーシキンは、この反乱に強い関心を抱き、史実を正確に描写するために、綿密な調査を行いました。彼は、反乱に関わった人々の記録や証言を収集し、反乱の舞台となった地域を訪れました。
「大尉の娘」の内容とテーマ
「大尉の娘」は、貴族の青年ピョートル・グリニョフを主人公とし、プガチョフの乱に巻き込まれていく様子を描いています。グリニョフは、赴任先のベルゴロツク要塞で、司令官の娘マーシャと恋に落ちます。しかし、要塞はプガチョフ軍に包囲され、グリニョフはプガチョフと対面することになります。
物語は、愛、名誉、忠誠、そして人間の善と悪という普遍的なテーマを探求しています。プーシキンは、単純な勧善懲悪の物語ではなく、複雑な状況下での人間の行動や心理をリアルに描いています。
「大尉の娘」の影響
「大尉の娘」は、ロシア文学史上の重要な作品とされ、その後のロシア文学に大きな影響を与えました。この作品は、ロシアの歴史と文化を理解する上で欠かせない作品として、今日でも広く読まれ続けています。