## プーシキンのエウゲニー・オネーギンの対称性
構成における対称性
* **鏡像構造:** 小説は大きく2つの部分に分けられます。前半はオネーギンがタチアナからの恋書を受け取るまで、後半はタチアナがグレーミンと結婚した後、オネーギンがタチアナに恋をするまでを描いています。この2つの部分は、登場人物の立場や感情が反転している点で鏡像関係にあります。
登場人物の対称性
* **オネーギンとレンスキー:** 主人公のオネーギンと詩人のレンスキーは、対照的な性格を持つ対称的な存在です。オネーギンは都会的で冷めたリアリスト、レンスキーは純粋で情熱的なロマンチストとして描かれます。彼らの対立は、物語の重要な軸となります。
* **タチアナとオルガ:** タチアナとオルガは姉妹でありながら、対照的な性格を与えられています。内向的で夢見がちなタチアナと、社交的で現実的なオルガは、それぞれオネーギンとレンスキーに対応する存在として描かれています。
モチーフの対称性
* **手紙:** 小説では、手紙が重要なモチーフとして繰り返し登場します。タチアナがオネーギンに送る手紙と、後にオネーギンがタチアナに送る手紙は、それぞれの感情を吐露する重要な場面です。これらの手紙は、対称的な状況下でそれぞれの心情を反映しています。
* **季節:** 小説の展開は季節の移り変わりと密接しており、物語の開始と終わりは冬、オネーギンとレンスキーの決闘は冬、タチアナとオネーギンの最初の舞踏会は冬というように、冬が重要な場面で登場します。これは、冬の持つ冷たさや静けさが、登場人物たちの心情や運命と重なり合っていることを示唆しています。
これらの対称性は、単なる形式的なものではなく、登場人物たちの運命や人間関係の複雑さを際立たせる効果を持っています。また、作者プーシキンは、これらの対称性を用いることによって、人間の感情や人生の複雑さをより深く描き出そうとしたと考えられます。