## プルードンの経済的諸矛盾の体系と時間
プルードンの大著『経済的諸矛盾の体系、あるいは労働組織における貧困の哲学』(1846年) は、時間という概念と複雑に絡み合った経済理論を展開しています。本稿では、作中で時間概念がどのように扱われ、プルードンの経済思想とどのように結びついているのかを詳細に検討します。
プルードンにおける時間の概念
プルードンは、時間を循環的なものと線的なものの二重構造として捉えていました。
#### 循環的な時間
農業労働や自然現象の周期性から着想を得たプルードンは、経済活動にもまた、生産と消費の繰り返しという循環的な側面があると見なしました。彼は、この循環性を維持することが経済的安定に不可欠だと考えました。
#### 線的な時間
一方でプルードンは、歴史の進歩や技術革新といった線的な時間概念も重視しました。彼は、人類社会が時間とともに発展し、より公正で平等な状態へと向かうと信じていました。
経済的諸矛盾と時間
プルードンは、当時の資本主義経済が孕む様々な矛盾を、時間概念と関連付けて分析しました。
#### 分業と時間
プルードンは、アダム・スミスが賞賛した分業システムが、労働者を機械の一部のように扱い、労働の時間的支配を強めると批判しました。彼は、分業によって労働者は自己決定権を失い、時間に対する自由を失うと主張しました。
#### 利潤と時間
プルードンは、資本家が利潤を得る仕組みを、時間に着目して分析しました。彼は、労働者が生産活動に従事している時間こそが価値を生み出す源泉であるにもかかわらず、資本家は労働時間の一部を利潤として搾取していると主張しました。
#### 機械と時間
プルードンは、産業革命によって導入された機械が、労働時間を短縮し、労働を解放する可能性を秘めていることを認めつつも、資本主義の下では、機械がさらなる搾取の道具となり、労働者を時間的束縛から解放するどころか、かえって強化する可能性を危惧しました。
時間の解放と相互主義
プルードンは、これらの経済的矛盾を克服するために、時間に対する労働者の支配権を回復することが不可欠だと考えました。彼は、労働者が自らの労働時間と生産手段を管理し、互いに協力して経済活動を行う「相互主義」という社会システムを構想しました。相互主義においては、労働者は時間に対する自由を獲得し、自己実現と社会貢献の両立が可能になると考えられています。