プルーストの失われた時を求めての発想
プルースト自身の体験に基づく記憶と時間
プルーストは自身の幼少期の記憶、特に母親との関係や過去の恋愛体験から、「失われた時」を作品の中心に据えることを着想しました。 幼少期に過ごしたコンブレーでのマドレーヌの味と香りの記憶から過去が鮮やかに蘇るエピソードは、自伝的要素が色濃く反映されています。
芸術による過去の再生
プルーストは、失われた時を回復する手段として「芸術」に注目しました。 小説内では、主人公が音楽や絵画、文学作品に触れることで、意識の底に沈んでいた過去の断片が呼び覚まされていきます。 特に、画家エルスチールや作曲家ヴァンユイルの芸術作品は、主人公に時間を超越した美と感動を与え、過去の記憶と結びついていきます。
無意識の重要性
プルーストは、人間の意識下に眠っている膨大な記憶や感情に注目し、それらがふとした瞬間に蘇ることで「失われた時」が回復されると考えました。 作中では、意識的な努力では思い出せない過去の断片が、感覚的な刺激や無意識の働きによって鮮やかに蘇る様子が描かれています。