プルタークの英雄伝の美
伝記文学の金字塔たる所以
プルタークの『英雄伝』は、紀元1世紀後半から2世紀初頭にかけて古代ローマでギリシャ語で書かれた、古代ギリシャ・ローマの著名な政治家や軍人を対比させた伝記集です。
優れた人物の生涯を通して歴史と人間性を描き出すという、伝記文学の金字塔として、2000年近くにわたり多くの人々に愛読され、後世に多大な影響を与え続けてきました。
プルタークの『英雄伝』の美しさは、以下の点に集約されます。
対比による人物描写の妙
本書は、ギリシャとローマの英雄を一人ずつ取り上げ、その生涯と人物像を対比しながら描くという構成が特徴的です。
例えば、テーセウスとロームルス、アレクサンドロス大王とガイウス・ユリウス・カエサルなど、同時代の英雄や、共通点を持つ英雄を対比させることで、それぞれの個性や功績、時代背景などがより鮮明に浮かび上がります。
生き生きとした人物描写
プルタークは、単なる歴史的事実の羅列ではなく、英雄たちの性格、行動、発言などを生き生きと描き出すことに重点を置いています。
英雄たちの内面や葛藤、人間的な弱さや失敗にも触れることで、読者は彼らをより身近に感じ、共感することができるのです。
教養に裏打ちされた筆致
プルタークは、歴史、哲学、文学など幅広い分野に精通しており、その深い教養は『英雄伝』の随所に散りばめられています。
歴史的背景や逸話の巧みな挿入、格調高い文体、そして含蓄に富んだ教訓は、読者に深い感銘と知的興奮を与えます。
普遍的な人間像の提示
プルタークは、『英雄伝』を通して、時代や文化を超えて人間に共通する普遍的なテーマ、すなわち野心、友情、裏切り、愛、死などを探求しています。
英雄たちの成功と失敗、栄光と挫折は、現代社会に生きる私たちにとっても貴重な教訓を与えてくれます。