プルタークの英雄伝の発想
英雄伝執筆の動機
プルターク自身は、『英雄伝』執筆の明確な動機を書き残していません。しかし、作品中に登場する人物評や比較、彼自身の置かれていた時代背景から、いくつかの推測が可能です。
まず、プルタークは道徳に関心を抱いていたことが挙げられます。彼は人間性の本質を探求し、善悪の判断基準や理想的な生き方を模索していました。
また、プルタークはローマ市民権を持つギリシャ人であり、ローマによるギリシャ支配を目の当たりにしていました。彼はギリシャとローマ、両方の文化に対する深い理解を持っていました。
英雄伝の構成と特徴
『英雄伝』は、ギリシャとローマの著名な政治家や軍人を対比させて描いた伝記集です。基本的には一組のギリシャ人とローマ人の伝記を対にして並べ、最後に二人の人物を比較した「比較列伝」を付しています。
特徴的なのは、プルタークが歴史的事実の正確性よりも、むしろ人物の性格や行動の描写に重点を置いている点です。彼は英雄たちの内面を深く掘り下げることで、読者が彼らの人生から教訓を引き出せるように仕向けています。
英雄伝の影響
『英雄伝』は古代から現代に至るまで、西洋文学に多大な影響を与えてきました。特にルネサンス期には古典復興の気運に乗って広く読まれ、多くの作家や芸術家にインスピレーションを与えました。