## プリゴジンの混沌からの秩序を面白く読む方法
### 1. プリゴジンって誰? 複雑系科学への第一歩
「混沌からの秩序」は、ベルギーの化学者イリヤ・プリゴジンが書いた、難解で知られる本です。しかし、その難しさは、彼が新しい科学、つまり複雑系科学の基礎を築いた先駆者であったことの裏返しでもあります。
プリゴジンは、従来の物理学や化学では説明できない現象、例えば生命の誕生や進化、社会システムの形成などに興味を持ちました。これらの現象は、無数の要素が相互作用することで、予測不可能な複雑な振る舞いを見せる、まさに「混沌」とした状態から生まれます。プリゴジンは、この混沌とした状態の中から、どのように秩序が生まれるのかを解き明かそうとしました。
### 2. 熱力学第二法則との格闘 エントロピー増大則のその先に
彼の研究の出発点は、熱力学第二法則、別名エントロピー増大則です。この法則は、簡単に言うと「世界は常に、より無秩序な方向へと変化していく」ということを示しています。
しかしプリゴジンは、生命現象や社会現象など、秩序が自発的に増大していくように見える例を数多く観察し、この矛盾に疑問を抱きました。そして、従来の熱力学では考慮されていなかった、「非平衡状態」におけるシステムの振る舞いに注目することで、この謎を解き明かそうと試みたのです。
### 3. 非平衡からの創造 散逸構造という名の秩序
プリゴジンは、生命体や社会システムのような複雑なシステムは、常に周囲の環境とエネルギーや物質を交換する「非平衡状態」にあることに着目しました。そして、このような非平衡状態においては、エントロピー増大則で説明できないような、秩序だった構造が自発的に形成されることを発見し、これを「散逸構造」と名付けました。
散逸構造は、外部からエネルギーや物質を取り込みながら、内部で生じるエントロピーを外部に放出することで、全体としてはエントロピーを減少させ、秩序を維持しています。生命体も、常に外部から栄養を取り込み、老廃物を排出することで、秩序立った構造を維持している散逸構造の一種と捉えることができます。
### 4. 具体例を探してみよう 身近なところに散逸構造
「混沌からの秩序」を面白く読むためには、プリゴジンの理論を、難しい数式ではなく、具体的なイメージで捉えることが重要です。例えば、沸騰したお湯の中にできる対流も、散逸構造の一種です。
お湯は熱せられることでエネルギーの高い状態、つまり非平衡状態になります。そして、そのエネルギーを効率的に放出するために、自発的に対流という秩序だった構造を作り出すのです。他にも、自然界や社会現象の中にも、散逸構造の例は数多く存在します。
### 5. 自分だけの散逸構造を探究する プリゴジンが提示した新しい世界観
プリゴジンの理論は、世界に対する全く新しい視点を提供してくれます。世界は、ただランダムに変化していく無秩序なものではなく、非平衡状態と散逸構造を通して、絶えず秩序を生み出し続ける、創造的なものであると捉え直すことができるのです。
「混沌からの秩序」を読み進める中で、プリゴジンの理論を、身の回りの現象に当てはめて考えてみてください。そうすることで、この本は、難解な科学書から、世界の見方を一変させる、エキサイティングな書物へと変わるはずです。