## プラトンの饗宴を読む
ソクラテス以前の哲学者たち
「饗宴」は、アテナイの悲劇詩人アガトンの家で開かれた酒宴の席で、参加者たちが順番に「愛」をテーマにスピーチを行うという形式をとった対話篇です。ソクラテスも参加しており、他の参加者たちのスピーチを聞いた後、最後に自身の見解を述べます。
最初にスピーチを行うのは、裕福な家の息子パウサニアスです。彼は愛には天上的な愛と地上的な愛の二種類があり、前者を尊ぶべきだと主張します。次に医師のエリュクシマコスが、愛は調和と秩序をもたらす力であると説きます。三番目の演説者アリストパネスは、人間は元来球体のような完全な姿をしていたが、神々に罰を与えられて二つに引き裂かれた存在であり、愛は失われた半身を求める気持ちであるというユニークな説を展開します。
ソクラテスの愛
ソクラテスは、自身がマンティネイアの女預言者ディオティマから愛について教わったとして、彼女の言葉を語り継ぐ形で自身の見解を述べます。ディオティマによれば、愛は不死と死の間にある「ダイモーン」という存在であり、美しさへの憧れから生まれるものです。愛は、美しい肉体から始まり、次第に美しい魂、美しい制度や習慣へと、その対象を移し替えていくことで、最終的には「永遠に存在する美」そのものの観想へと至るとされます。
饗宴の終わり
ソクラテスのスピーチの後、突如としてアルキビアデスが現れ、泥酔状態ながらもソクラテスの魅力について熱弁を振るいます。その後、宴は終わりを迎えます。「饗宴」は、愛の本質についての多様な見解を示すと同時に、ソクラテスの思想の深淵を垣間見せる作品として、古代から現代に至るまで多くの読者を魅了し続けています。