プラトンの饗宴の選択
選択とは何か
「饗宴」は、古代ギリシャの哲学者プラトンによって書かれた対話篇です。この作品では、アガトンの家で開かれた宴会の席で、参加者たちが順番に「愛」をテーマとしたスピーチを披露します。ソクラテスも参加しており、彼は最後の演説者となります。
ソクラテスのスピーチは、愛の神秘的な預言者であるディオティマの教えとして語られます。ディオティマによれば、愛は美しいものへの憧れであり、永遠性への希求から生まれます。愛は、まず美しい肉体へと向かい、やがて美しい魂、そして最終的には美そのものへと昇華していく過程として描かれます。
選択の重要性
ディオティマの教えの中で、愛の対象を「選択」することが重要視されます。愛は単なる欲望の充足ではなく、より高次の美へと向かうための「階段」として機能します。
美しい肉体への愛は、最初の段階に過ぎません。そこからさらに、美しい魂へと目を向け、最終的には美そのものを理解し、愛することが重要となります。この昇華の過程において、適切な対象を「選択」していくことが不可欠となります。
選択の難しさ
「饗宴」では、愛の対象を「選択」することの難しさについても示唆されています。ソクラテス以外の登場人物たちは、それぞれの立場から愛を語りますが、彼らの多くは愛の真の姿を理解していません。
例えば、パウサニアスは肉体的な愛と精神的な愛を区別しようとしますが、真の愛のあり方を見失っています。また、アリストパネスは、人間はかつて球体であり、愛は失われた半身を求める行為だとするユニークな説を唱えますが、これもまた限定的な愛の捉え方と言えます。
このように、「饗宴」では、愛の対象を「選択」することの重要性と難しさの両方が浮き彫りにされています。真の愛へと至るためには、単なる欲望や感情に流されることなく、適切な対象を選び取っていく必要があると言えるでしょう。