プラトンの饗宴の周辺
ソクラテスを中心とした対話篇
『饗宴』は、古代ギリシャの哲学者プラトンによる対話篇であり、ソクラテスが中心人物として描かれています。舞台は紀元前416年、アテネの悲劇詩人アガトンが自作の祝賀のために開いた宴です。この宴席では、参加者たちが順番に「愛」をテーマにスピーチをするという趣向で行われます。
登場人物と愛の定義
参加者たちはそれぞれ独自の視点から愛を定義づけていきます。例えば、パウサニアスは天上的な愛と地上的な愛を区別し、エリュクシマコスは医学的な見地から、アリストファネスは神話がかった説で愛を説明しようと試みます。ソクラテスは、ディオティマという女性から聞いた話として、愛を「美の孕みと出産への希求」であると定義し、肉体的・精神的な愛を超越した、永遠のイデアとしての美を希求することこそが真の愛であると説きます。
アルキビアデスの登場
宴もたけなわになった頃、酔っ払ったアルキビアデスが現れ、ソクラテスへの一方的な愛を告白します。アルキビアデスはソクラテスの肉体的魅力と精神的な魅力を称賛し、彼を手に入れようとした過去のエピソードを赤裸々に語ります。
哲学的テーマ
『饗宴』では、「愛」を主要なテーマとして、美、魂、知識、幸福など、プラトン哲学における重要な概念が議論されています。ソクラテスの弁論は、肉体的な愛を超えた、永遠のイデアとしての美への希求こそが真の愛であると主張しており、プラトンのイデア論を理解する上で重要な手がかりを与えています。
歴史的背景
『饗宴』が書かれた時代は、ペロポネソス戦争と呼ばれるアテネとスパルタの戦争の最中でした。アテネ社会は戦争の影響で大きく揺れ動いており、伝統的な価値観が問い直されていました。そうした時代背景の中で、プラトンは『饗宴』を通して、普遍的な愛のあり方を探求しようと試みたと考えられています。