## プラトンの国家の思考の枠組み
###
正義とは何か
プラトンの『国家』は、個人と国家の両レベルにおける「正義」の本質を探求する壮大な対話篇です。ソクラテスを語り手として、様々な立場の人物と議論を交わし、「正義とは何か」、「正義は個人にとって有益なのか」といった根本的な問いに対する答えを探し求めます。
###
理想国家の構想
正義を探求する過程で、ソクラテスは理想国家の構造を構想します。この国家は、個人の資質に基づいて三つの階層に分けられます。
1. **統治者(哲人王):** 知を愛し、理性によって統治する能力を持つ者。
2. **守護者(戦士):** 勇気を持ち、国家を守る役割を担う者。
3. **生産者(職人・商人など):** 欲望に基づいて生産活動に従事する者。
各階層はそれぞれの役割を果たすことで、国家全体の調和と正義を実現するとされます。
###
魂の三分割
ソクラテスは、理想国家の構造を人間の魂に適用し、「魂の三分割」という概念を提示します。
1. **理性:** 知を愛し、真実を求める部分。
2. **気概:** 勇気や名誉を重んじる部分。
3. **欲望:** 快楽や利益を求める部分。
個人においては、理性が気概と欲望を統御することで、魂の内に正義が実現されると考えられます。
###
イデア論
『国家』において、ソクラテスは「イデア論」と呼ばれる哲学的概念を展開します。イデアとは、感覚的に捉えられる現実世界の背後に存在する、永遠不変の真実の姿です。
例えば、私たちが目にする様々な「机」は、どれも「机のイデア」の不完全な模倣にすぎません。真の知識とは、感覚を超越してイデアを認識することであるとされます。
###
教育の重要性
プラトンは、理想国家の実現には、市民に対する適切な教育が不可欠であると説きます。特に、統治者となるべき哲人王は、長年の厳しい教育と訓練を通じて、イデアを認識する能力を養わなければなりません。
音楽や体育、数学、哲学など、様々な分野の学習を通して、魂を鍛錬し、正義を理解するに至ることが重要視されます。
###
全体主義的な側面
『国家』は、理想的な社会秩序を追求する過程で、全体主義的な側面を持つことも指摘されています。
例えば、統治者による情報統制や、個人の自由よりも国家全体の利益を優先する思想などは、現代の視点からは問題視される可能性があります。