プラトンの国家のテクスト
ソクラテスの方法
「国家」は、大部分が対話形式で書かれています。これは、ソクラテスが用いたとされる問答法を反映したものです。ソクラテスは、自らの無知を告白し、対話相手との問答を通じて真理に迫ろうとしました。「国家」においても、ソクラテスは様々な立場の人々と議論を交わしますが、その多くは、ソクラテスが相手の発言の矛盾を突くことで進行します。この手法は、読者にも自ら考え、答えを導き出すことを促す効果があります。
理想国家の構想
「国家」の中心テーマの一つは、理想国家の構築です。ソクラテスは、正義（dikaiosynē）という概念を探求する中で、個人における正義と国家における正義の類似性を論じます。そして、個人の魂と同じく、国家もまた、知恵、勇気、節制といった徳を持つべきだと主張します。ソクラテスは、哲人王が統治し、厳格な身分制度が敷かれた理想国家を構想します。この理想国家は、現代の視点からは、全体主義的あるいは非現実的と批判されることもあります。
イデア論
「国家」では、プラトンの哲学の中核をなすイデア論も展開されます。イデアとは、永遠不変の真の実在であり、我々が感覚で捉えることができるこの世界 phenomena（現象界）の背後に存在するとされます。ソクラテスは、洞窟の比喩を用いて、イデアの世界と現象界の関係を説明します。イデア論は、「国家」における理想国家論の根拠ともなっています。なぜなら、理想国家は、イデアとしての正義をこの現象界に実現したものとみなせるからです。
教育の重要性
「国家」において、教育は重要な役割を担っています。ソクラテスは、理想国家を実現するためには、市民を適切に教育することが不可欠だと考えます。特に、哲人王となるべきエリート層には、厳しい教育が課されます。それは、哲学、数学、音楽などを学び、最終的には善のイデアを理解することを目指すものでした。ソクラテスにとって、教育は単なる知識の詰め込みではなく、魂を正しい方向へと導くための重要なプロセスだったのです。