プラトンのメノンの思考の枠組み
メノンにおける主要な問いかけ
プラトンの対話篇「メノン」は、ソクラテスと、若く裕福なテッサリア人メノンとの対話という形式をとっています。メノンは、ソクラテスに徳が教えられるかどうかを問うことから始めます。この一見シンプルな問いかけは、実は奥深く、対話全体を通して探求されることになる、一連の哲学的問題へと発展していきます。
徳の本質
ソクラテスは、徳が教えられるかどうかを判断する前に、まず徳自体が何であるかを理解する必要があると主張します。彼は、何かを教えるためには、それが何であるかを明確に理解していなければならないと論じます。メノンは当初、徳を定義することに苦労し、男性、女性、子供、老人、奴隷、自由人など、さまざまな人々にとっての徳の例を挙げます。しかし、ソクラテスは、これらの例は徳の本質を捉えておらず、単に徳のさまざまな顕れを示しているに過ぎないと反論します。
知識としての想起説
徳の本質を定義することができないことに不満を感じたメノンは、探求を続けることに疑問を抱きます。彼は、もし私たちが徳が何であるかを知らないのだとしたら、そもそもどのようにしてそれを見つけることができるのでしょうか、と問います。これは、メノンのパラドックスとして知られるようになりました。このパラドックスに応えて、ソクラテスは、魂は不滅であり、かつてはすべての知識を持っていたという、想起説を提示します。彼によれば、学ぶことは単に魂にすでに存在する知識を思い出すことに過ぎません。
奴隷少年の例
ソクラテスは、メノンの奴隷少年に幾何学の問題を解かせることで、想起説を実証しようとします。少年は最初は問題の解き方がわかりませんが、ソクラテスの巧みな質問を通して、最終的には正しい答えを導き出します。ソクラテスは、これは少年がすでに自分の内側に知識を持っていたことを示しており、単にそれを思い出す必要があっただけだと主張します。
真なる信念と知識
ソクラテスは、想起説を通じて、徳は一種の知識であると結論付けます。しかし、彼は、真なる信念と知識を区別することが重要であるとも指摘します。人は、徳について真なる信念を持つことはできますが、それが必ずしも知識であるとは限りません。知識とは、正当化された真なる信念であると彼は主張します。言い換えれば、知識とは、真であり、それを信じている理由があり、その理由が妥当であるような信念です。
徳は教えられるか？
対話の最後で、ソクラテスとメノンは、徳は教えられるかどうかという当初の問いに戻ります。彼らは、徳が知識であるとすれば、原則として教えられるはずであると結論付けます。しかし、彼らは、真の徳の教師を見つけることは非常に難しいとも認めています。ソクラテスは、自分自身も他人を徳のある人にすることはできないと主張しており、真の徳の教師はほとんどいないのではないかと示唆しています。
メノンの遺産
プラトンの「メノン」は、知識、徳、学習の本質についての難解な問いかけを提示する、豊かで複雑な対話篇です。メノンのパラドックスと想起説は、西洋哲学の歴史において、その後何世紀にもわたって思想家たちに影響を与え、議論の的となってきました。対話の中で提起された問いかけは、今日においてもなお、私たち自身の徳の理解と教育の目的に疑問を投げかけています。